日本は世界でも有数の高齢化社会であり、85歳以上の高齢者人口は約700万人に上ります。ここではあくまで思考実験として、この世代が一斉にいなくなった場合、社会・経済・地域にどのような影響を与えるかを多角的に分析します。
社会保障費の削減と国家財政への影響
85歳以上の高齢者は医療・介護の公的支出の中でも大きな割合を占めており、その人口が一気に減少すれば、短期的には社会保障費は大幅に圧縮されると考えられます。
たとえば、2023年度の国の社会保障関係費は約37兆円にのぼりますが、そのうち高齢医療や介護給付に関する支出は数兆円規模で減少する可能性があります。しかし、制度的には固定費的な部分も多いため、即時に予算が余剰になるとは限りません。
介護・福祉業界への壊滅的打撃と雇用の再編
介護や高齢者福祉に従事する人は全国で200万人を超えます。需要が一気に消滅することで、これらの職に就く人々は職を失い、産業構造の変化を迫られます。
一方で、他業界—特に建設・物流・ITなど—では人手不足が深刻化しているため、労働移動がスムーズに行われれば全体としての生産性が上がる可能性もあります。
人口減と国内消費の縮小
700万人の人口減少は消費市場に大きな影響を与えます。高齢者向けのサービス、医薬品、福祉機器、不動産(高齢者住宅など)などへの支出が減少する一方、若年層向け消費に再配分される可能性も考えられます。
ただし、高齢者は一般に貯蓄率が高く、日常的な消費は控えめであるため、消費の絶対額の下落幅は限定的と見る向きもあります。
地方の過疎化と都市集中の加速
高齢者の多くが地方に在住しているため、人口減少がそのまま地方消滅を加速させる要因となります。結果として、公共交通や医療インフラの維持が困難となり、残された地域住民の生活にも深刻な影響を及ぼすでしょう。
一方、若者は都市部へと流出する傾向が強まるため、東京・大阪などの大都市への人口集中はさらに強まる可能性があります。
農業・漁業分野への影響と食料価格の上昇
農林水産省によると、農業従事者の平均年齢は67歳を超えており、85歳以上の高齢者も現場に多く関わっています。彼らが一斉に引退または消滅することで、耕作放棄地や供給量の減少が加速し、国内産農産物の価格が上昇する可能性があります。
特に地方での「兼業農家」や「家族経営農家」が崩壊し、流通構造にまで影響を及ぼす可能性も否定できません。
平均給与と景気への影響
①平均給与への影響:高齢者が労働人口の母集団から外れることで、統計上の平均給与は一時的に上昇する可能性があります。若年〜中堅層の比率が高まり、平均給与を押し上げる効果があるからです。
②景気への影響:短期的には消費減少や業界崩壊によって景気後退が懸念されますが、構造的な労働移動がうまく機能すれば、中長期的には再成長への起点となるかもしれません。
まとめ:高齢者の一斉減少は複雑な波及をもたらす
85歳以上の高齢者700万人が突然いなくなるという事態は、経済・社会保障・地域バランスなど、多方面にわたるインパクトをもたらします。
社会保障の軽減や労働力再配置といったプラス面もある一方で、消費縮小や農業崩壊、地域消滅といったマイナス面も無視できません。
このようなシナリオを想定することは、日本の少子高齢化社会の未来を多面的に考えるうえで有意義な試みだといえるでしょう。

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