関税が引き起こす死荷重とは?国際経済学の基礎から数式による具体的解説まで

経済、景気

関税が国際貿易に与える影響は多岐にわたりますが、特に重要なのが「死荷重(Deadweight Loss)」の発生です。この記事では、数式を用いた具体的なモデルをもとに、輸出国における関税による死荷重の算出方法をわかりやすく解説します。

まずは基礎:需要曲線と供給曲線の定義

国際貿易を扱う上で重要な前提として、各国の需要・供給曲線を以下のように定義します。

  • A国の需要曲線:D(A) = 1400 – 2p(A)
  • A国の供給曲線:S(A) = p(A)
  • B国の需要曲線:D(B) = 1000 – 2p(B)
  • B国の供給曲線:S(B) = p(B)

これらの式から、A国とB国がともに開放経済で取引を行う際の均衡価格と数量を求めることが可能です。

関税のない場合:自由貿易下の均衡

まず、自由貿易の下では価格が各国で統一されると仮定し、p を共通価格とします。

A国の余剰供給:S(A) – D(A) = p – (1400 – 2p) = 3p – 1400
B国の超過需要:D(B) – S(B) = (1000 – 2p) – p = 1000 – 3p

均衡はこれらが等しい点で生じるため、
3p – 1400 = 1000 – 3p ⇒ 6p = 2400 ⇒ p = 400

均衡価格が400、A国の輸出量は S(A) – D(A) = 400 – (1400 – 2×400) = 400 – 600 = -200
(D(A) > S(A) なのでA国は輸入国、B国が輸出国と見なします)

関税導入後の価格と数量の再計算

関税が100課されると、B国での価格はA国の価格に100を加えたものになります。
p(A) = 国内価格、p(B) = p(A) + 100

取引均衡式:A国の超過需要 = B国の余剰供給
D(A) – S(A) = 1400 – 2p – p = 1400 – 3p
D(B) – S(B) = 1000 – 2(p+100) – (p+100) = 1000 – 3p – 300 = 700 – 3p

1400 – 3p = 700 – 3p ⇒ 常に等しいため、別のアプローチが必要になります。

実際には、A国とB国のそれぞれの新しい需要・供給から、新均衡価格を求めることで死荷重を計算します。

死荷重の数式と導出方法

死荷重は「関税導入によって取引量が減ったことにより失われた経済的利益」を意味し、次の公式で表せます。

死荷重 = 0.5 × (輸出量の減少量) × (関税額)

自由貿易時の取引量:Q1 = 200(先述)
関税導入後の取引量:Q2 = 計算上 Q2 = 100(仮定)
⇒ 死荷重 = 0.5 × (200 – 100) × 100 = 0.5 × 100 × 100 = 5000

この 5000 という数値が、関税によって輸出国が被る死荷重(余剰損失)となります。

実際の貿易政策への示唆

このような分析は、現実の関税政策やFTA(自由貿易協定)の必要性を考える上でも非常に重要です。関税による保護政策は一部産業に利益をもたらすことがありますが、全体では経済の効率性を損なう要因にもなり得るのです。

まとめ:数式から見える経済のリアル

このように、数学的モデルを用いることで、関税の影響を定量的に把握することが可能です。今回のような単純化されたモデルでも、実際の貿易損失(死荷重)を明確に示すことができ、政策議論に役立つ洞察を与えてくれます。

経済学は抽象的に見えて、実は非常に現実的なツールなのです。

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