近年、経済政策に関する議論で注目されている「MMT(Modern Monetary Theory:現代貨幣理論)」。政府は自国通貨建ての国債をいくらでも発行でき、財政赤字を気にせずに支出を増やすべきだというこの理論に対して、「間違っている」「いや、むしろ合理的だ」と意見が真っ二つに分かれています。この記事では、MMTの基本的な考え方と、それに対する評価や批判をバランスよく紹介し、「MMTは間違っているのか?」という問いに多角的にアプローチします。
MMTとは?従来の財政論と何が違うのか
MMTの主張は、大まかに以下のようなものです。
- 政府は自国通貨を発行できる限り、財政赤字を恐れる必要はない
- インフレが発生しない限り、支出を増やして経済成長を促進すべき
- 税金や国債発行は、政府支出の「資金調達」ではなく、インフレ調整や通貨の信用維持の手段
これは、従来の「財政赤字は将来世代へのツケ」「国の借金は返さなければいけない」といった発想と真っ向から異なります。
MMTを支持する側の主張
MMT支持者は、リーマンショックやコロナ危機において巨額の財政出動が行われたにもかかわらず、先進国で大規模なインフレが長らく起きなかったことを根拠に、「財政赤字が直ちに問題になるわけではない」と主張します。
例えば米国では、2020〜2021年にかけて数兆ドル規模の財政支出が行われたにも関わらず、インフレの急上昇が見られたのは後年であり、それも供給制約やエネルギー価格などの影響が大きいと指摘されました。
MMTへの代表的な批判
一方で主流派経済学者の多くはMMTに批判的です。最大の懸念は、「政治が財政規律を失うことで、制御不能なインフレを招く」という点です。政府がインフレに対応するために「税金を上げる」などの抑制策を迅速に取れる保証がない以上、MMTの前提は非現実的だという声があります。
また、インフレが起きた後の対応では手遅れになる可能性も高く、中央銀行の独立性や金利政策との整合性をどう担保するかも課題です。
MMTは政策か?理論か?
MMTは厳密には「政策提言」ではなく「貨幣に関する理論的枠組み」です。つまり、税と支出の関係や、通貨の供給源をどう理解するかという前提に対する新たな視点を提供しています。
この点については、批判派の中にも「MMTのいくつかの論点は、実際の通貨制度の運用に近い説明をしている」と部分的に評価する研究者もいます。要は、MMTを単なる「財政出動万能論」と誤解してしまうと、理論の本質を見誤ることになります。
実例:MMT的政策の実験と結果
MMTを全面採用した国家は存在しませんが、一部の政策は「MMT的アプローチ」として試みられました。たとえば日本では長年にわたり日銀による国債買い入れが続いており、「事実上の財政ファイナンスでは?」と指摘されています。
しかし、インフレがほとんど起きなかったことから、「MMTの考えは実証的に一定の説明力がある」との見方もある一方、2022年以降の物価上昇を受けて、「出口戦略の不在が問題」という批判も強まっています。
まとめ:MMTは「完全な間違い」とも「正解」とも言い切れない
MMTは、貨幣制度の理解を再構築する意義深い理論であり、特に経済危機下ではその柔軟な発想が注目されてきました。一方で、政策運営におけるインフレ管理の困難さや、政治的なリスクは依然として大きな懸念材料です。
したがって、MMTは「間違いか?」という問いに対しては、「一部に有効な視点を含みつつも、万能ではない」というのが最も妥当な評価と言えるでしょう。

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