従業員持株会を通じて株式を保有している場合、その会員個人にどのような株主としての権利が認められるのかは、多くの非上場企業において明確に理解されていない分野です。特に、保有割合が1%以上となった際に株主総会での発議(株主提案権)が行使できるのかどうかは、法的・実務的な検討が必要となります。本記事では、その判断基準や注意点について解説します。
株主提案権とは何か?基本から確認
株主提案権とは、会社法303条に基づき、一定の条件を満たす株主が株主総会の議題に対して提案を行うことができる権利です。通常、株式の議決権を3ヶ月以上継続して保有し、かつ保有割合が1%以上、または300個以上の議決権を持っていることが要件となります。
上場・非上場を問わず、これらの要件を満たせば提案は可能です。ただし、実務面では非上場企業の規模や運営体制により、対応のハードルが高い場合があります。
従業員持株会を通じた保有と個人株主の違い
従業員持株会は、複数の社員が出資し株式を共同保有する仕組みであり、実際の名義人は「持株会」となります。そのため、たとえ1人の会員が多額を拠出し、実質的に1%以上を保有していたとしても、形式上は個人ではなく団体としての保有とみなされます。
ただし、持株会の規約で「会員に議決権が帰属する」と明記されている場合、法的には会員が株主として議決権を行使する立場にあると解釈される可能性が出てきます。ここが本件の焦点となる部分です。
実務上の発議は可能か?法的な検討ポイント
会員が「形式上の名義人」ではない場合、そのままでは会社法上の株主としては扱われません。つまり、形式的な株主である持株会そのものが株主提案権を持つことになります。
したがって、たとえ会員個人が持株会内で1%以上の株式に相当する出資分を持っていても、名義人が個人でない限り、原則として個人による発議はできません。ただし、持株会が株主として総会での提案をすることは可能であり、内部での合意形成があれば、会員の意思が反映されることはあります。
議決権の帰属が明記されている場合の扱い
「会員個人が議決権を持つ」と持株会規約に明記されている場合、会社側がそれを認める実務運用をしていることを前提に、会員が会社法上の株主と同様に扱われる可能性があります。
このようなケースでは、発議に必要な保有期間や保有割合の条件を満たしていれば、株主提案権の行使が可能になる可能性があります。ただし、これは法的にも曖昧な部分があり、会社の運用方針や登記上の名義、規約の文言の正確性など複合的な要因による判断が必要です。
具体的な対応:どうすれば発議が可能になるか
まず、自身が従業員持株会を通じて保有している株式がどのように名義上・実質上管理されているかを確認しましょう。その上で、議決権の行使主体が誰であるか、株主提案を行う場合に会員個人として動けるのかを会社または持株会の事務局に問い合わせる必要があります。
仮に名義人が持株会のままで個人が発議できない場合は、持株会として発議を行うことも検討に入れるべきです。持株会内部での合意形成や手続きフローを確認し、事前に弁護士など専門家へ相談するのも有効な手段です。
まとめ:名義と規約の整合性がカギを握る
従業員持株会会員が株主総会で発議を行うためには、形式的に誰が株主なのか、議決権が誰に帰属しているのかが重要です。1%以上の実質保有があっても、名義が会員個人でなければ株主提案権を行使できないのが原則です。
規約や保有構造を正しく理解した上で、必要であれば持株会全体での提案や、規約改正の働きかけを検討しましょう。適切な手続きを踏めば、社員としての声を会社経営に反映させることは十分に可能です。

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