現代貨幣理論(MMT)と日本財政の現実:楽観論と危機感の狭間で考えるべきこと

経済、景気

インターネットやSNSの普及により、経済に関する情報は瞬時に拡散されるようになりました。特に近年、日本の財政について「借金しても大丈夫」「国債は無限に発行できる」といったMMT的な主張が急増し、一般の人々にも影響を与えています。ですが、これらの主張には慎重な検討が必要です。

MMTとは何か?そしてなぜ話題になるのか

MMT(現代貨幣理論)は、政府が自国通貨を発行できる限り、財政赤字を心配する必要はないという立場をとる経済理論です。理論上、インフレさえ制御できれば、国債の発行も問題ないとされます。

この考え方は、特に低金利が続く状況下で支持を集め、米国でも一部の政治家や学者が取り上げました。しかし、主流派経済学では依然として慎重な扱いを受けています。

日本における財政赤字と国債の実態

日本は世界でもトップクラスの政府債務残高を抱えていますが、その大半は国内で消化され、通貨も自国通貨である「円」です。そのため、デフォルトのリスクは理論上低いとされます。

一方で、2024年以降、日本の長期金利に変動が見られ、2025年6月17日には海外投資家の売りが原因とされる金利上昇が話題になりました。これは、国内外の信認に揺らぎが生じ始めた兆候とも読めます。

財政規律は“敵”なのか

SNS上では「財政規律は国民を縛るだけ」といった風潮も見られますが、これは極端な見方です。財政規律は、インフレや金利急騰といった副作用を避けるためのガードレールとも言えます。

過去には、インフレ制御に失敗した国(ジンバブエ、ベネズエラなど)が通貨危機に直面し、生活が困窮した例もあります。日本でも慎重な財政運営は決して無意味ではありません。

国債が売られた場合に何が起きるのか

仮に海外投資家が日本国債のリスクを過大と判断すれば、国債売り・金利上昇・円安進行という「トリプルパンチ」が起きかねません。これは輸入コストの上昇を招き、生活必需品の価格が高騰する恐れがあります。

たとえば、エネルギーや食料を海外に頼っている日本では、円安は家計に直撃します。2022年の急激な円安時に、電気代やガソリン代が高騰した記憶はまだ新しいはずです。

健全な議論には両側面の理解が不可欠

国債の発行にはメリットもあります。インフラ投資や教育支援など、将来の成長に繋がる支出であれば、ある程度の借金も正当化される場面があります。

しかし、あくまで「将来への投資」と「負担の世代間バランス」を意識しなければ、ツケを将来世代に回すだけになりかねません。単純な「刷ればOK」論ではなく、財政の質や信認維持が鍵です。

まとめ:冷静な視点と多角的な理解を持とう

日本の財政は、通貨発行権を持つことから破綻しにくい構造を有していますが、だからといって財政規律を軽視してよいわけではありません。インフレリスク・市場信頼・為替の変動を総合的に捉える必要があります。

MMT的な議論が盛んになる今こそ、経済学の基礎や世界の事例を参考に、冷静な判断と健全な議論が求められています。

経済、景気
最後までご覧頂きありがとうございました!もしよろしければシェアして頂けると幸いです。
最後までご覧頂きありがとうございました!もしよろしければシェアして頂けると幸いです。
riekiをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました