「永久劣後債の『特別利益の提供』に該当するのか?証券業界ルールと法規制の変遷」

資産運用、投資信託、NISA

近年、公社債市場では“簿価調整”や“レス販”など、価格操作や販売優遇を巡る議論が注目されています。本記事では、永久劣後債を例に、かつての慣行と現在の法制度・自主ルールの観点から「特別利益の提供」に該当するかどうかを整理します。

簿価調整とは何か?

簿価調整とは、たとえば時価90円の債券を100円で買い取り、その一方で別の時価80円の債券を90円で売る、といった価格操作的な取引を指します。

かつては新発債における投資家誘引のため、こうした手法が行われていたケースもありました。

なぜ今は禁止されているのか?

2021年に証券業協会(日証協)主導で導入された“トランスペアレンシー方式”により、引受残や販売先情報の透明化が求められるようになりました。これにより、簿価調整など不透明な価格操作が抑制されています :contentReference[oaicite:0]{index=0}。

法的には、金融商品取引法の「不当な利益・不当な取引誘引の禁止」規定や日証協の自主規制ルールにより、現在は禁止事項に含まれています。

①は法令か自主ルールか?

この禁止は主に日証協の自主ルールによるものですが、金融商品取引法の不公正取引に関する条項とも整合しています。

② “時価”はどう定義される?

一般債市場の“時価”は売参値やJS価格など複数の指標があり、明確な統一定義は存在しません。

しかし、簿価調整の問題は「売り手が恣意的に価格を操作しているかどうか」にあり、価格指標のどれを使うか以上に「透明性・正当性」が問われます。

③ 募集残やレス販の扱いは?

トランスペアレンシー導入以前から、レス販(引受残の販売)は黙認されていましたが、高いビッドを付ける行為は制限の対象となりました。

自主ルールでは、起債時に透明性を確保し、適切な価格形成を促す仕組みを重視しています。

④ イールドダッチ方式や大阪府債のケースは?

イールドダッチ方式は公開形式で価格が決定されるため透明性が高く、禁止事項には該当しません。

ただし、強引な入札誘導や価格操作が認められる場合、自主ルールや不当利得規定に抵触する可能性は残ります。

何が「特別利益の提供」になるのか?

結論として、簿価調整などによって投資家に不当な金銭的利益をもたらす行為は、日証協ルールと不公正取引禁止条項の双方で禁止されています。

特に「他の顧客との間で不公平な条件で取引を誘導する」ことが問題視されます。

まとめ

永久劣後債を含む債券市場において、簿価調整や高ビッドレス販は、もはや許容されない行為です。

①日証協のトランスペアレンシー方式による自主規制、②金融商品取引法による不当利益禁止、③投資家への透明性確保、これらが重なり、現在は禁止されています。

もしも「簿価調整のような取引があった」と感じた場合は、証券会社に確認し、必要に応じて日証協への相談もひとつの選択肢となります。

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