バブル崩壊後の日本は本当に不景気だったのか?物価と実質所得から読み解く「氷河期世代」の現実

経済、景気

近年、「30年前の日本は本当に不景気だったのか?」という疑問を持つ人が増えています。特に現代の物価高と比較し、「当時の年収の実質的な価値は高かったのでは?」と考える声も。しかし、バブル崩壊直後から始まった不況と、その後の「就職氷河期世代」の実態は、単なる印象論では片付けられない深刻な構造問題が背景にありました。

バブル崩壊後の経済状況とは?

1991年にバブルが崩壊すると、日本経済は「失われた10年(実質20年)」と呼ばれる長期低迷期に突入しました。株価と地価は急落し、金融機関は不良債権を大量に抱えることになりました。政府は何度も景気刺激策を講じましたが、デフレ圧力が強く、経済成長率は1〜2%台にとどまりました。

一方で、企業は将来の不確実性に備え、正社員の採用を控えるようになり、非正規雇用や派遣労働が急速に増加しました。

就職氷河期世代の苦境

いわゆる「就職氷河期世代」とは、1993年頃〜2005年頃に就職活動を迎えた世代を指します。特に1998〜2004年にかけての新卒求人倍率は1.0を大きく下回り、大学を卒業しても正社員になれず、非正規やフリーターとして職を転々とせざるを得ない人が続出しました。

この時期に正規雇用として就職できなかったことは、その後のキャリア形成や年収、さらには結婚や住宅取得、老後の年金受給にまで長期的な影響を与えました。単なる「言い訳」では済まされない社会構造的な問題だったのです。

当時と今の物価・所得を比較

一見すると、30年前の日本は「モノの値段が安く、年収が高かった」ように感じられます。例えば、1990年代初頭の平均年収は450〜500万円台で、現在とあまり変わりません。一方、物価は今ほど高くはなく、マクドナルドのハンバーガーは80円前後、ディズニーチケットは4000円台、自動車も200万円以下で買えるモデルが主流でした。

しかしこれは「デフレ傾向」であるがゆえで、企業の利益は圧縮され、個人所得は伸び悩みました。年収が高くても、それに見合う職の確保が困難だったのです。

なぜ「不景気だと感じた」のか

バブル期の異常な好景気(株価日経平均4万円目前、土地は「持っているだけで儲かる」)の記憶と比較した結果、「何をやっても儲からない」「会社が倒産する」「リストラされる」といった社会不安が急速に高まりました。そのギャップこそが、当時の国民が「景気が悪い」と強く実感した理由です。

たとえ相対的な豊かさがあっても、期待値との落差が大きければ「不幸感」が際立つのです。

現代との違い:今の若者の“失われ方”

現在の日本は「スタグフレーション(景気停滞+物価上昇)」の傾向があり、実質賃金は下がり続けています。物価は上がっても給与が伸びず、可処分所得は目減り。たしかに過去と比較して「1千円の価値」が薄れていると感じるのも無理はありません。

つまり、30年前と今では「失われ方の性質」が違うのです。かつては“職がない時代”、今は“働いても報われにくい時代”といえるでしょう。

まとめ:30年前は「不景気」だったのか

結論として、バブル崩壊後の日本は間違いなく「不景気」でした。高卒や大卒という学歴にかかわらず、多くの若者が「働く場そのもの」を失っていた現実は、「氷河期世代」の苦しみとして社会問題化もしています。

今と昔、どちらが「より苦しい」かを単純比較することはできませんが、当時の苦境を知ることで、今の社会をより良くするヒントが見えてくるかもしれません。

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