関税でインフレを起こせるのか?アベノミクスとコストプッシュ型インフレの関係を考察

経済、景気

「アベノミクスでインフレを目指すなら、いっそ高関税を導入して物価を押し上げるべきだったのでは?」という意見は、一見筋が通っているようにも思えます。しかし、実際には関税によるインフレ政策には多くの副作用や限界が存在します。本記事では、関税政策とインフレの仕組み、アベノミクスとの関係、そして経済的な持続可能性について解説します。

インフレには2種類ある:需要プル型とコストプッシュ型

インフレ(物価上昇)には主に二つのタイプがあります。ひとつは需要プル型インフレで、景気の拡大により消費が活発になり、需要が供給を上回ることで起こります。もうひとつはコストプッシュ型インフレで、原材料費や輸入品価格の上昇など、供給側のコストが価格に転嫁されることによって発生します。

アベノミクスの目的は、主に前者である「需要プル型」のインフレでした。これは、デフレマインドから脱却し、賃金や消費を伴って経済を拡大させる健全な成長を目指したものです。

トランプ政権の関税政策との比較

トランプ前大統領は、自国産業保護のために中国や他国に対して高関税を課しました。その結果、一部製品の価格が上昇し、コストプッシュ型のインフレが生じましたが、これは消費者にとっては単に「物価が上がるだけ」であり、賃金上昇が伴わなければ実質所得が減る「悪いインフレ」となります。

同様の施策を日本が行った場合、輸入コストの上昇はエネルギー・食品・原材料に直撃し、消費者負担が増大します。結果として消費が冷え込み、景気がさらに悪化する可能性があるのです。

アベノミクスの三本の矢とインフレ目標

アベノミクスの三本の矢には「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「成長戦略」がありました。その目的は、持続可能な成長を通じてデフレ脱却とインフレ率2%の達成です。

この中で、無理な関税引き上げによるコストプッシュ型のインフレは、あくまで想定外の副産物であり、政策の本流ではありません。むしろ「輸入物価上昇による消費圧迫」は避けるべきものでした。

関税を使ったインフレ誘導の限界と副作用

  • 消費者負担の増加:高関税による価格上昇は、実質賃金を減少させるため、生活水準が低下する。
  • 供給網の混乱:輸入制限によって原材料や部品が調達しにくくなり、国内生産が停滞。
  • 外交関係の悪化:特定国への高関税は報復措置を招く恐れがあり、貿易摩擦を引き起こす。

これらの理由から、安易に関税を用いたインフレ誘導は持続的な成長戦略とはなり得ないのです。

もし仮に「高関税政策」が採用されていたら?

仮に安倍政権時にトランプ並みの高関税政策を実施していた場合、物価上昇は一時的には実現したかもしれません。しかしその結果、消費が冷え込み、企業投資も鈍化することで、経済全体の失速が加速した可能性があります。

また、財政改善どころか税収の低迷、実質成長率の悪化といった負のスパイラルに陥るリスクも高まっていたでしょう。

まとめ:良いインフレと悪いインフレを見極めることが重要

インフレは必ずしも経済に悪ではなく、賃金上昇と需要拡大を伴う健全な形であれば、成長の証でもあります。アベノミクスが目指したのはまさにこの「良いインフレ」でした。

一方、関税によるコストプッシュ型の「悪いインフレ」は、生活コストを上げ、経済を縮小させかねません。政策判断にはその持続可能性と副作用を冷静に評価する視点が不可欠です。

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