なぜ半導体需要が高い中でJSファンダリは破産に至ったのか?業界の現実とその背景を解説

経済、景気

世界的に半導体需要が高まっている中、2025年7月14日、JSファンダリが東京地裁に破産を申請したというニュースが波紋を呼びました。供給不足が話題になるほどの半導体市場において、なぜファウンドリ(半導体製造受託企業)が経営破綻したのでしょうか。本記事では、その背景を業界全体の構造や市場動向からひも解きます。

半導体需要は「量」だけでなく「質」も問われる

まず重要なのは、世界的な半導体需要が高いからといって、すべての半導体企業が潤うわけではないという事実です。特に製造技術の進化は著しく、最新の微細加工プロセス(例:5nm、3nm)に対応できない企業は、競争から取り残される可能性が高くなっています。

JSファンダリは旧式の設備による製造ラインが多く、特にIoT向けのアナログ半導体や旧世代プロセスの製品に特化していました。こうしたニッチ領域では需要があっても、大手ファウンドリとの価格競争が厳しく、利益を出しづらい状況に置かれていたのです。

製造コストと収益構造のアンバランス

半導体製造は非常に資本集約型の産業です。設備投資には数百億円以上かかることも珍しくなく、最新鋭の製造ラインを導入しなければ、コスト面でも生産効率でも競争に勝てません。

JSファンダリは旧設備を維持しながら運営しており、エネルギーコストや人件費の上昇が経営を圧迫していました。また、受注先との価格交渉力も弱く、材料費の高騰を価格転嫁できずに採算が悪化。こうした構造的な問題が破産の大きな原因となっています。

市場の二極化と中小ファウンドリの苦境

半導体市場は現在、TSMCやSamsungなどのメガファウンドリと、それ以外の中小企業との二極化が進んでいます。大手は高い技術力と圧倒的なスケールで世界中から受注を獲得し、小規模企業は価格競争に飲み込まれています。

さらに、顧客企業も「安定供給」を重視し、倒産リスクの低い大手企業に発注を集中させる傾向が強まり、JSファンダリのような中堅企業は事業継続のための受注確保も困難でした。

特別損失と経営再建の失敗

JSファンダリは2024年度に特別損失を計上しており、一部資産の減損処理などで財務内容がさらに悪化しました。これはすでに5月に開示されていましたが、決算での業績見通しが市場予想を大きく下回ったことで、投資家の失望売りが加速しました。

加えて、過去の経営再建策が実を結ばず、新たな資金調達やM&Aも進展しなかったことで、最終的に事業継続を断念することとなりました。

国内半導体産業の課題とは

日本の半導体産業全体にも共通する課題があります。それは「中堅・中小の製造会社が次世代投資を行う資金力を持たない」点です。国の補助金制度もあるものの、数兆円規模の投資が必要な先端製造に対して、支援が十分とは言えません。

そのため、今後もJSファンダリのように淘汰される企業が出てくる可能性は否定できません。政府の産業政策や、民間資金の呼び込みによる業界再編が急務です。

まとめ:需要の高さと経営の強さは別問題

JSファンダリの破産は、表面的な「半導体需要の高さ」とは裏腹に、製造技術・コスト構造・市場競争といった複合的な要因が経営を左右する厳しい現実を示しています。今後の日本の半導体産業の再生には、単なる需要追従ではなく、戦略的な設備投資と支援体制の強化が求められています。

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