日本は過去20年以上にわたり、毎年30兆円規模の国債を発行し続けています。一見するとこれは積極的な財政出動のように見えますが、それでも「緊縮財政」と批判されることがあります。この矛盾のような現象には、日本の財政政策の仕組みと運用方針の違いが背景にあります。
国債発行額と支出の実態
国債の発行額が多いからといって、それが必ずしも経済を活性化させる「積極財政」を意味するわけではありません。発行された国債の多くが、過去の借金返済(償還)や利払い、または社会保障費など「義務的経費」に充てられており、新たな経済成長を促す『政策的支出』は限定的です。
たとえば、公共事業、教育、科学技術開発などの分野には予算があまり回らず、財政の柔軟性が非常に乏しいのが実情です。
プライマリーバランス黒字化目標が招く緊縮
「緊縮財政」とされる最大の要因は、政府が掲げる「プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化」目標です。これは、借金に頼らず税収だけで政策を賄うことを意味し、支出抑制が優先される傾向を生んでいます。
そのため、景気が悪化しても国民への直接的な財政支援が限られ、「財政の健全化」名目で予算削減や増税が優先されてしまうのです。
民間支出とのバランスに課題
日本は長期にわたるデフレと需要不足に苦しんでおり、本来であれば政府が支出を拡大し、需要を下支えする必要があります。しかし「緊縮的な姿勢」が続くと、民間が消費や投資を手控える中、経済が停滞したままになってしまいます。
特にコロナ禍や災害時の対応など、危機的状況でも迅速な財政出動が遅れることが多く、国民生活への影響が大きくなる傾向があります。
国債発行=積極財政ではないという誤解
「国債を発行している=財政拡大」という考え方には注意が必要です。実際には、財政支出の質や構造が問題であり、どの分野にどれだけの予算が投じられているかが重要です。
例として、仮に100兆円の予算があっても、その大半が医療費や年金など過去の制度維持に使われれば、新たな成長分野への投資はわずかしか残りません。
国際比較から見る日本の財政スタンス
欧米諸国と比較しても、日本はコロナ禍などでの現金給付やインフラ投資など、即効性のある政策に消極的だったと指摘されています。[参照:財務省データ]
たとえば米国では、景気刺激策として数兆ドル規模の財政出動が迅速に行われましたが、日本では何度も議論が繰り返され、規模も相対的に小さいものでした。
まとめ:真の意味での積極財政とは何か
毎年国債を発行していても、それが「積極的な経済対策」につながっていなければ、国民の実感としては「緊縮財政」になってしまいます。財政政策の議論では、単に金額の多寡ではなく、その配分と目的が問われるべきです。
真の意味での積極財政とは、未来への投資や生活支援を通じて、持続可能な成長を実現する政策です。形式的な数字だけにとらわれず、本質を見極める視点が求められています。

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