最低賃金を1500円に引き上げる議論は、「インフレ促進」「企業の人件費負担増」「リストラや人員削減」の懸念と背中合わせです。本記事では、現状の状況と今後のシナリオをわかりやすく整理し、事例や数字にもとづいて解説します。
■ なぜ最低賃金1500円が注目されているのか
2024年、政府は2030年代半ばに全国平均時給1500円の実現を目指す政策目標を掲げました。背景には物価上昇傾向に対応した賃上げ要求があります。
実際、大企業では2025年に5%超、2024年にも5.1%という記録的昇給が実施された一方、中小企業では賃金増が追いついておらず、最低賃金引き上げの必要性が声高に示されています。
■ インフレとの関係
日本銀行の試算によれば、最低賃金が1%上昇するとサービス価格は0.07ポイント程度上昇し、インフレを加速させる可能性があります。また、労働コストの上昇は企業の価格転嫁を促し、物価の上昇圧力となります。
実際、2024〜25年期の名目と実質賃金の推移を見ると、名目は3%程度上昇しているものの、実質賃金は2.9%の低下傾向にあることから、賃上げだけでは実質的な購買力回復は難しい状況です。
■ 企業の人件費負担とリストラリスク
中小企業の過半数は、時給1500円実現は「無理」または「難しい」と回答しています。理由は人件費増→利益圧迫→価格転嫁による競争力低下に悩む結果です。
NRIの試算では最低賃金引き上げ後、労働時間を減らす“就業調整”をして実質年収を維持しようとする労働者も多く、結果として人員整理や雇用調整が必要になるリスクも示唆されます。
■ 経済と雇用への実証的な影響
2018年韓国の16%引き上げでは失業率が3.6%→4.4%に上昇、民主党政権下の2010年日本でも▲30万人の雇用減が記録されました。
日本の最新研究でも、最低賃金上昇エリアでは雇用比率が2%程度低下することが確認されており、短期的な雇用縮小の可能性が高まります。
■ 1500円引き上げは実現可能か?
1500円実現には年7%以上の引き上げが必要ですが、過去最高でも6.9%。現実的には達成困難な目標です。
実際、企業アンケートでは「今後5年間で1500円実現は難しい」との回答が多数。政府目標達成のための補完策(社会保障・生産性向上支援等)が不可欠となります。
■ まとめ:見極めが重要
ポイントは「賃金上昇」と「物価・雇用環境」のバランスです。中小企業や非正規で働く人にとっては、実質収入の維持と働き方見直しが必要です。
賃金1500円の実現には3つの柱が不可欠です。
- 物価上昇に見合った生産性の向上
- 価格転嫁可能なビジネスモデル
- 働く側の雇用調整に対応する仕組み構築
政策の狙いは「賃金→消費→景気回復」ですが、現実的には中小企業の負担や雇用調整リスクをどう補完するかがカギとなります。

こんにちは!利益の管理人です。このブログは投資する人を増やしたいという思いから開設し運営しています。株式投資をメインに分散投資をしています。
コメント