経済学を学ぶうえで基本となる「三面等価の原則」は、国民所得を異なる3つの側面から見たときに同じ金額になるという考え方です。しかし、実際に国民所得の構成要素を見ていくと、「海外からの純所得」の扱いや、経常収支との関係など、混乱しやすいポイントがいくつもあります。本記事では、三面等価の構造を確認しながら、海外からの純所得がどこに含まれるのか、そしてそれが一致するのかどうかを明確にしていきます。
三面等価の原則とは何か?
三面等価の原則とは、国民経済計算において「生産」「分配」「支出」の3つの面から測った国民所得(GNI)が等しくなるという原則です。具体的には、
- 生産面:GDP(国内総生産)+海外からの純所得
- 分配面:雇用者報酬、営業余剰、固定資本減耗など
- 支出面:民間消費+政府支出+総固定資本形成+純輸出+海外からの純所得
このように、理論上は各面から見た金額が同じにならなければなりません。
海外からの純所得とは何か?
「海外からの純所得」は、国民が海外から得た所得(例:配当、利子、賃金など)から、外国人が国内から得た所得を差し引いたものです。この数値は、GDPに対して付加されることで、GNI(国民総所得)が算出されます。
つまり、GNI = GDP + 海外からの純所得という関係が成り立ちます。
支出面での「海外からの要素」の取り扱い
支出面での国民所得を見るときには、民間消費や投資、政府支出に加えて、「純輸出(輸出-輸入)」も加算されます。そしてその上で、GNIベースとするには、やはり海外からの純所得を加える必要があります。
このため、支出面でもGNIにおける「海外からの純所得」は生産面と一致する形で反映されていることになります。
「経常海外余剰」とはどう違うのか
経常海外余剰とは、経常収支の黒字部分のことで、これは「貿易・サービス収支」「第一次所得収支(=海外からの純所得を含む)」「第二次所得収支」などを合計した値です。したがって、海外からの純所得は経常収支の一部に含まれますが、イコールではありません。
たとえば、第一次所得の黒字があるが、貿易収支が赤字であれば経常収支は赤字となるため、海外からの純所得と経常海外余剰は数値的に一致しません。
なぜ混乱が生じやすいのか?
経済統計では「GDP」や「GNI」、「経常収支」などが別々に使われるため、同じような言葉でも含まれる内容が異なる場合があります。特に「国民所得」において、GDPベースなのかGNIベースなのかを曖昧にしてしまうと混乱しやすくなります。
教科書によって表現が異なるのは、「三面等価=GDPベースで見る」としているものと、「三面等価=GNIベースで見る」としているものが混在していることも要因の一つです。
まとめ:海外からの純所得は一致するが、見方に注意
生産面と支出面の国民所得に含まれる「海外からの純所得」は理論上は同一の金額です。三面等価の原則が正確に成り立つためには、これが一致していなければなりません。
ただし、「経常収支」や「経常海外余剰」との違いに注意し、GNIベースでの分析とGDPベースの統計を混同しないようにすることが大切です。

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