アメリカが慢性的に貿易赤字を抱えているにもかかわらず、米ドルは依然として「世界の基軸通貨」の地位を維持しています。この事実は、経済初心者にとっては一見矛盾しているように見えるかもしれません。この記事では、アメリカの貿易赤字とドルの信認との関係性、そしてそれがなぜ成り立っているのかを、経済学的な視点からわかりやすく解説していきます。
貿易赤字とは?アメリカの経常収支の構造を理解する
貿易赤字とは、輸出よりも輸入が多い状態を指します。アメリカは長年にわたり、毎年数千億ドル規模の貿易赤字を計上しています。
その一方で、アメリカは資本収支(外国からの投資流入)が非常に大きく、貿易赤字を帳消しにする形で経常収支は一定のバランスを保っています。つまり、貿易赤字=経済が悪いという単純な見方は誤りなのです。
なぜドルは基軸通貨として支持され続けるのか
ドルが基軸通貨として機能している理由は、単なる経済規模だけでなく、信頼性・流動性・透明性・軍事的影響力など、複合的な要因に支えられています。
多くの国がドル建てで貿易を行い、中央銀行が外貨準備としてドルを保有している現実が、ドルの需要を支え続けているのです。
「双子の赤字」理論とその誤解
1980年代に話題となった「双子の赤字(Twin Deficits)」理論では、財政赤字と貿易赤字が続くと通貨安につながるとされていました。しかし現実には、アメリカの貿易赤字が拡大しても、ドルが下落するどころか、むしろ高止まりする場面すらあります。
その理由の一つが、世界中の資本が安全資産としてアメリカ国債を買い求めているという点にあります。ドル建て資産への需要が高まる限り、ドル安にはなりにくいのです。
実例:貿易赤字とドルの信用が並立してきた歴史
例えば2000年代初頭、アメリカはITバブル崩壊やイラク戦争などで多額の財政赤字を出していました。同時に貿易赤字も深刻化していましたが、ドルは基軸通貨としての地位を保ち続けました。
リーマンショック後も同様で、ドルは「逃避通貨」として世界中の資金を吸い寄せました。つまり、危機が起きてもなおドルに資金が集中するという事実が、米ドルの信認の強さを物語っています。
基軸通貨の地位と信用の源泉
基軸通貨の信認は単に「赤字の有無」ではなく、国の総合的な信用、特に法制度・金融市場の透明性・軍事力・技術力などが支えています。
そのため、アメリカが貿易赤字であっても、それに比例して基軸通貨としての信頼性が「上がる」わけではありませんが、「維持される」要因にはなっているといえます。貿易赤字の裏で世界中にドルが流通し、グローバルな金融エコシステムが安定的に回る仕組みになっているからです。
まとめ:貿易赤字はドルの信認を毀損するものではない
アメリカの貿易赤字はドルの信認を毀損するどころか、グローバルにドルを供給する役割を担うという一面を持っています。しかし、それはあくまでドルの信認を支える要素のひとつであり、貿易赤字=基軸通貨としての信用度アップという単純な図式ではありません。
今後、基軸通貨としてのドルの地位が揺らぐとすれば、それは経済規模ではなく、制度的信用や金融市場の信頼性の失墜によるものとなるでしょう。

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