「日本がアメリカに約80兆円を投資し、その利益の90%をアメリカが受け取る」という話題がSNSなどで拡散されています。この情報を表面的に受け取ると、日本が不当に搾取されているようにも感じられますが、実際の文脈や仕組みを見ていくと、数字の意味合いはまったく異なります。本記事では、この日米投資の内容と利益配分の仕組みを冷静に解説します。
「80兆円投資」とは日本が企業としてアメリカに進出する話
まず、「80兆円(5500億ドル)の対米投資」というのは、日本政府がアメリカに「資金提供する」という話ではなく、主に日本企業がアメリカに設備投資・工場建設・雇用創出を行うという意味です。
例としては、トヨタやソニー、ソフトバンクなどがアメリカ国内に製造拠点やR&D拠点を作るようなもので、その費用の合計が「数兆円規模」にのぼるという形です。これは「上納金」ではなく、「現地事業への進出」です。
利益の90%がアメリカに入るという話の誤解
次に、「利益の90%をアメリカが受け取る」という表現ですが、これは事業の収益がアメリカ国内で回ることを意味しているにすぎません。たとえば、現地の従業員への賃金、税金、地元企業への発注などが含まれます。
実例:日本企業がアメリカに工場を建て、現地で自動車を製造・販売した場合、売上から人件費、材料費、税金などが差し引かれ、最終的な「純利益」は親会社(=日本企業)に戻るのが一般的です。
したがって、「売上のうち90%がアメリカに持っていかれる」というのは、感覚的には理解できる表現ですが、日本企業が利益を得られないという意味ではありません。
自動車関税15%の背景とその影響
米国が日本車に対して15%の関税を課しているという点も、混乱の一因となっています。実際、アメリカはWTOのルールに基づき、日本車への関税は2.5%に設定されています(乗用車の場合)。15%という数字は誤情報か、他国との比較で出てきた数字の可能性があります。
関税とは別に、トランプ政権時代に「安全保障を理由とした関税強化」も議論されましたが、最終的に日米間で大きな制裁的関税は回避されました。
日本は本当に損をしているのか?
確かに、日本企業がアメリカに投資することで、アメリカ国内で雇用が生まれ、米国経済が潤う側面はあります。しかし、その見返りとして日本企業はアメリカ市場に確実にアクセスし、現地生産によるコスト削減やブランド力向上といった利益を得ています。
たとえばトヨタはアメリカ市場だけで年間数兆円の売上を記録し、その一部が日本本社の利益となって還元されています。つまり、対米投資は経済的なリターンを得るための「攻めの経済外交」なのです。
まとめ:悲観ではなく「仕組み」を正しく理解しよう
「80兆円を上納して、90%を取られる」といった言説は、感情的には響きやすいものですが、実際の国際ビジネスの構造を理解すれば、これは誤解に基づく過度な不安といえます。
日本は対外投資大国であり、多くの企業が海外で利益を上げています。その中でアメリカ市場は極めて重要なターゲットであり、戦略的な投資は必要不可欠です。数字だけを切り取って悲観するのではなく、その背景と仕組みを冷静に読み解くことが、これからの時代には求められます。

こんにちは!利益の管理人です。このブログは投資する人を増やしたいという思いから開設し運営しています。株式投資をメインに分散投資をしています。
コメント