「消費税を廃止して法人税を累進化し、あとは国債を発行すれば財源は賄える」という主張は一部で根強くありますが、果たしてそれだけで日本の財政は成り立つのでしょうか?経済学や財政の実情を踏まえて、このアイデアのメリットとリスクを多角的に検証していきます。
消費税の役割とその存在意義
消費税は日本の基幹税収の一つであり、国と地方を合わせた年間の税収のうち20兆円以上を占めています。しかも、景気に左右されにくい安定財源である点が特徴です。社会保障費の増大が続く中で、歳出の安定的な裏付けとして重要な役割を果たしています。
実際、消費税収は高齢化に伴って増える医療費や年金などの財源に直結しており、単純な廃止には代替財源の確保が不可欠となります。
法人税の累進化は現実的か
法人税を累進課税にすれば高収益企業からより多くの税を取れるという発想は理にかなっていますが、グローバル経済下では慎重な判断が必要です。なぜなら、法人税率が高くなると企業は税負担の軽い国へ拠点を移す「タックス・インバージョン(租税回避)」の動きが出る可能性があるからです。
実例として、フランスがかつて高い法人税率を導入して企業の流出が加速し、後に減税へ転じた経緯があります。税率だけでなく、投資環境全体を考慮した政策設計が重要です。
国債発行で財源確保は可能なのか?
国債の発行は一時的な資金調達手段として有効ですが、過度な発行は財政の持続可能性を損ないます。特に日本はすでにGDPの2倍以上に相当する国債残高を抱えており、利払い費の増大や市場の信認低下といった副作用が懸念されます。
たとえば、2022年度の国債費(元利払い)は約24兆円に達しており、国債依存が進めば進むほど予算の硬直化が進みます。財源を「借金」に依存する体質からの脱却が求められています。
理論としてのMMT(現代貨幣理論)とその限界
国債を無制限に発行してもインフレが起きない限り問題ないというMMT(Modern Monetary Theory)は一部で注目されています。しかし、これは極端なインフレや通貨価値の下落という重大なリスクを孕んでいます。
たとえば、アルゼンチンやトルコでは過度な通貨発行と財政膨張により、激しいインフレと通貨安に直面しました。日本においても仮に国債発行が際限なく続けば、円の信認が揺らぎかねません。
財源構造のバランスが鍵
持続可能な財政を構築するためには、特定の税や手段に過度に依存するのではなく、所得税・法人税・消費税・資産課税といった複数の税源をバランスよく組み合わせることが望まれます。
さらに、無駄な歳出の見直しや、経済成長による税収の自然増も重要です。構造改革や成長戦略と連動した税制改正が求められます。
まとめ:単純な解ではなく、複合的な設計が必要
消費税を廃止し、法人税を累進化し、国債を発行する——一見シンプルな処方箋ですが、実際にはその裏に多くの制度的・経済的リスクが潜んでいます。
現実的な財政運営には、国際的な競争環境や市場の信認、人口構造の変化などを織り込んだ複合的な政策設計が不可欠です。ポピュリズム的な議論に流されず、専門家の知見を踏まえた持続可能な政策が今こそ求められています。

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