年金の受け取り開始時期はいつが得?60歳・65歳・70歳の比較と投資運用シミュレーションで検証

資産運用、投資信託、NISA

「年金はいつ受け取り始めるのが一番得なのか?」この問いは、人生100年時代の今、多くの人にとって非常に現実的なテーマです。年金の受給開始時期は60歳から70歳まで選べますが、早くもらうと減額、遅らせると増額という制度上の特徴があります。そこで本記事では、「60歳から受け取って運用する」ケースと、「70歳から受け取る」ケースを、長寿前提の視点で比較し、何歳で追いつき・追い越すのかをシミュレーションします。

年金の繰上げ・繰下げの基本:何がどのくらい増減する?

公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)の受給開始は、原則65歳。ただし、60歳から繰上げると最大30%減額(1ヶ月ごとに0.4%減)、70歳まで繰下げると最大42%増額(1ヶ月ごとに0.7%増)されます。

具体例として、65歳から年額200万円受け取れる人の場合。

  • 60歳開始(30%減):年額140万円
  • 65歳開始(基準):年額200万円
  • 70歳開始(40%増):年額280万円

この金額は原則として一生変わりません。

投資運用との比較:60歳からもらって投資する場合の仮定

60歳から受給し、その年金を投資信託(例:オルカン、S&P500など)に運用すると仮定します。仮に年平均4%で複利運用した場合、70歳時点でいくらになるのかを試算します。

毎年140万円を10年間積み立て、年利4%で運用すると、70歳時点の元本+運用益は約1,719万円になります。これは70歳開始の人が年280万円をもらい始める段階でのスタートラインとなります。

70歳から年金をもらう人はいつ追いつくのか?

70歳開始の人は年額280万円を受け取り始めます。一方で、60歳開始の人は投資信託を取り崩しながら、年額140万円の年金を継続して受け取ります。

70歳から比較を始めると、年差は280万−140万=140万円。1,719万円の運用資産を140万円ずつ取り崩すと約12.3年。つまり、82〜83歳ごろに70歳開始組が追いつきます。

その後も70歳開始組は毎年280万円の年金を受け取り続けるのに対し、60歳開始組は140万円+残りの資産の取り崩しになります。長生きするほど差は拡大していきます。

人生90年時代を想定した場合の比較結果

90歳まで生きたと仮定した場合、70歳開始組は90歳時点で総受給額280万円×20年=5,600万円。一方で60歳開始組は140万円×30年=4,200万円+投資運用益1,719万円=約5,919万円(取り崩し終了まで含む)。

この場合、厳密には60歳開始で運用した方がやや有利ですが、それは運用益を取り崩すタイミングやリターンが理想通りにいった場合の話です。

一方、70歳開始は安定した高額年金を一生受け取れるため、老後後半の資金不安が少ないという利点があります。

投資にはリスクもあることを忘れずに

年金を投資に回す場合、想定通りに4%の利回りが確保できるとは限りません。特に市場が不安定な時期に突入した場合、大きく目減りする可能性もあります。

また、資産を取り崩すタイミングで暴落があると「順序リスク」によって資産寿命が縮むリスクもあるため、現実的には安全資産とリスク資産のバランスも重要です。

まとめ:損得は寿命と投資リターンで変わるが、選択の軸は「安定」か「運用」か

年金の受給開始時期は、それぞれにメリットとデメリットがあります。60歳から受け取り投資に回せば、うまくいけば70歳開始よりも得する可能性がありますが、運用リスクは避けられません。

一方、70歳から高額な年金を受け取る選択は、長寿リスクに備えた安定戦略といえます。自分の健康状態、生活スタイル、資産状況、リスク許容度を踏まえて、自分に合った選択をすることが、老後の安心に繋がるのです。

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