経済学の基本概念に「収穫逓減の法則」があります。これは、ある生産要素(労働や資本など)を追加していくと、一定の段階から追加的な利益が逓減するという理論です。にもかかわらず、GAFAM(Google・Apple・Facebook・Amazon・Microsoft)と呼ばれるアメリカの巨大テック企業は、数十年にわたり高収益・高成長を維持しています。本記事では、その矛盾に見える構造を読み解きます。
収穫逓減の法則とは何か
収穫逓減の法則とは、たとえば農業において土地という固定資源に労働を追加しても、最初は生産量が増えてもやがて効果が薄くなるという理論です。この考え方は製造業など「物的資源」を使うビジネスにおいて顕著です。
しかし、この理論は「限られた資源」に依存する産業においてのみ成り立つことが多く、情報産業のような「スケーラビリティが極めて高い産業」では適用が難しいのです。
GAFAMが収穫逓減を受けにくい理由
GAFAMはデジタル資産を活用したビジネスモデルを構築しています。データ、アルゴリズム、クラウドインフラといった無限にスケール可能な資産を中心に事業を展開しているため、追加的なユーザーやサービス提供にかかるコストが極めて低いのです。
たとえばGoogleの検索エンジンは、1人増えても1億人増えてもシステム構造を大きく変える必要はなく、コストの増加も微々たるものです。一方で広告収入はユーザー増加に応じて拡大します。
ネットワーク効果と収益の拡大
GAFAMの強みには「ネットワーク効果」もあります。ユーザー数が増えれば増えるほど、そのサービスの価値が高まり、新たなユーザーや企業、広告主を惹きつけることができます。これはFacebook(Meta)やInstagramのようなSNS、またAmazonのマーケットプレイスにおいて顕著です。
この構造は、古典的な収穫逓減ではなく、むしろ「収穫逓増」(Returns to Scale)が働いている状況です。
クラウド化とマージナルコストの極小化
Microsoft AzureやAmazon Web Services(AWS)に代表されるクラウドビジネスでは、初期の開発・インフラ投資さえ完了すれば、新規顧客獲得時のマージナルコスト(限界費用)は限りなくゼロに近づきます。
そのため、顧客数や使用量が増えるほど売上は直線的に、あるいは指数関数的に伸びる一方で、コストの伸びは非常に緩やかにとどまる構造となっています。
知的財産とブランドの蓄積がもたらす持続的優位性
GAFAMの持つ強力なブランドと知的財産(特許・技術・データ資産など)は、新規参入者にとって大きな参入障壁となります。AppleのiOSエコシステムやGoogleの検索アルゴリズム、MicrosoftのOffice・Windowsの支配力などがその例です。
これらの強固な地盤により、たとえ市場が飽和しても新製品やサービスの導入で再び成長を実現できる柔軟性があります。
実例:AppleのiPhone戦略に見る収益の持続性
AppleはiPhoneという単一製品に依存しているようでいて、実際にはApp Store・iCloud・Apple Musicなどのエコシステムから継続収益を得るビジネスモデルを築いています。デバイスの更新需要に加え、既存ユーザーからのサービス収益が定期的に入ることで収益が安定しています。
さらに、一度獲得した顧客はブランドロイヤリティが高く、次もApple製品を選ぶ傾向が強いという、リテンション効果も働いています。
まとめ:収穫逓減の法則を超える「情報経済」の力
GAFAMの成功は、古典経済学の枠を超えたビジネスモデルとテクノロジーの活用に支えられています。情報資産のスケーラビリティ、ネットワーク効果、低マージナルコスト、ブランドとエコシステムの構築により、収穫逓減の影響を受けにくい構造を持っています。
今後の経済活動やビジネス構築においては、こうした新たな原則や視点を取り入れることが成功への鍵となるでしょう。

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