日本の財政状況は長年にわたり「危機的」と言われ続けてきました。その一方で、日本政府が保有する米国債の規模は80兆円以上とも言われ、巨額の海外資産を持っている事実もあります。こうした矛盾のように見える状況に「財政破綻寸前と言われながら、なぜそんな投資ができるのか?」と疑問を抱く方も少なくありません。本記事では、日本の財政の実態と、アメリカへの投資=米国債購入の仕組みについて、専門的視点を交えてわかりやすく解説します。
日本の財政は本当にギリシャより悪いのか?
よく比較されるのが「日本の政府債務残高がGDP比で200%を超えており、ギリシャ以上に深刻」という指摘です。しかし、これは政府債務のみを取り上げた一面に過ぎません。重要なのは、その借金が誰に対してあるかです。
ギリシャの債務は外国からの借り入れが多かった一方で、日本の国債の大半は国内の投資家(銀行、保険会社、日銀など)が保有しています。つまり、日本は「自国通貨建ての借金」を国内で回しているため、ギリシャとは根本的に構造が異なるのです。
なぜ日本は米国債に80兆円も投資できるのか?
まず、日本が米国債を保有しているのは主に外貨準備の一環としてです。外貨準備とは、通貨の安定を保つために各国が保有している外貨建て資産であり、その中でも米ドルは基軸通貨として最も多く保有されます。
日本は貿易黒字国として大量のドルを手にし、それを安全性の高い資産に運用する際、最も信頼性の高い米国債を選ぶのは自然な流れです。財務省と日銀が連携して運用しており、これは政府の債務とはまったく別の資産勘定に属するものです。
国家の「借金」と「資産」は別次元で管理されている
一般家庭の家計では、借金がある状態で投資を行うことに疑問を感じるかもしれませんが、国家財政は違います。日本政府は債務と同時に膨大な資産も保有しており、その総資産はおよそ700兆円(金融資産含む)にのぼります。
また、企業や年金基金、外貨準備などの資産運用と政府の財政赤字は目的も構造も異なるため、「借金があるのに投資するのはおかしい」という考え方は国家運営では成立しません。
米国債保有の目的と戦略的意義
日本が米国債を保有する主な目的は、国際通貨市場における円の安定化と、ドル資産の安全な運用です。米国債は市場流動性が極めて高く、信頼性もあるため、外貨準備として最適です。
また、経済的・外交的な観点からも、日本がアメリカの国債を保有することは、日米関係の強化や世界経済の安定に寄与する側面を持っています。
よくある誤解:「国債が多い=すぐ破綻」は本当か?
日本は確かに巨額の国債を抱えていますが、それは自国通貨建てであり、中央銀行(日銀)が機動的に対応できる点で、外貨建て債務とは根本的に異なります。
例えば、2020年以降のコロナ対応で日銀が国債を大量に買い入れましたが、財政は破綻せず金利も低位で推移しました。これは「信用創造」と「金融緩和政策」が機能していることを意味します。
まとめ:見かけの数字ではなく「構造」を理解しよう
「財政が危機的だから、海外投資なんてできないはず」という誤解は、財政と金融の構造を混同したことによるものです。日本の財政には確かに課題がありますが、米国債への投資はその財政悪化とは切り離された外貨運用戦略の一環です。
単純な比較や数字に惑わされず、国家財政や通貨政策の仕組みを正しく理解することが、健全な議論や判断の第一歩となります。

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