投資信託を別口座(家族口座)へ移すのは得策か?税金と手数料の観点から徹底解説

資産運用、投資信託、NISA

「自分の保有している投資信託を、家族の証券口座に移したい」──こうしたニーズは、相続対策や家庭の資産管理の目的などで一定数あります。しかし、現状の日本の証券取引制度では、口座間の投資信託移管には直接的な手段が存在しません。この記事では、別名義の口座へ投資信託を移す際に考慮すべきポイントを、税制や手数料の観点から解説します。

原則:別名義間の投資信託移管は「売却&買い直し」が必要

SBI証券を含む多くの証券会社では、本人名義の口座間であれば投資信託の移管が可能です。しかし、配偶者や家族など別名義の口座へ移す場合、一度売却し、現金で受け渡した上で相手名義の口座で再購入するしかありません。

この場合、「売却」時点で課税が発生します。特定口座で運用していれば、売却益に対して20.315%の税金(所得税+住民税+復興特別所得税)が源泉徴収されます。

再購入にかかるコストとタイミングのリスク

再購入時には、購入タイミングにより価格変動のリスクがあります。たとえば、売却から買い直しまでに数時間〜1日空くだけでも、基準価額が変動する可能性があります。

また、購入時に信託報酬はかからないものの、ノーロード(購入手数料無料)でない商品であれば、手数料コストも発生する可能性があります。

相手口座の「特定口座」と「一般口座」の違いにも注意

妻のSBI証券口座で買い直す場合、その口座が特定口座(源泉徴収あり)になっていれば、売却時の納税は証券会社が代行してくれます。

ただし、一般口座や源泉徴収なし口座の場合、自ら確定申告をして税額を計算する必要があります。資産移管に伴う税制上の負担を減らすには、家族口座の区分も事前確認しておくことが重要です。

代替策:ジュニアNISAや贈与による資産移転

どうしても家族名義の資産として移したい場合、年間110万円までの非課税枠を活用した「贈与」として現金を移し、受け取り側で買い直すという方法もあります。

また、2024年から制度が刷新された新NISAを活用すれば、非課税で積立投資を始めることも可能です。SBI証券の新NISA制度では成長投資枠を使ってS&P500連動型インデックス投資信託も購入できます。

実例:税負担と価格変動のリスク比較

仮にS&P500ファンドを500万円保有しており、売却時に20%の利益が出ていた場合、約20万円の税金が発生します。この税負担と、移管後の買い直しで再び長期運用できるメリットを比較検討する必要があります。

また、売却時の価格と買い直し時の価格が異なれば、実質的な損益に影響が出るため、マーケットの動きにも注意が必要です。

まとめ:得策かどうかは目的とコストのバランスで判断

投資信託を別名義の口座に移すためには「一度売却して買い直す」必要があり、その過程で税金と価格変動リスクが発生します。節税対策・資産分散・家族内管理といった目的が明確であれば検討の余地がありますが、単に名義変更したいという理由だけではコストが見合わない可能性があります。

手数料・税金・口座の種類・代替手段をトータルで比較し、長期的な資産運用の観点から判断することが重要です。

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