なぜ含み損は“事実上の損失”で、含み益は“絵に描いた餅”なのか?投資心理と行動経済学から読み解く真意

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投資の世界には「含み損は事実上の損失だが、含み益は絵に描いた餅にすぎない」という言葉があります。この表現は一見すると矛盾しているように感じられますが、実は投資家の心理や行動経済学、さらには税制の観点からも理にかなった面を持っています。今回は、その背景にあるロジックや実例をもとに、なぜこのような扱いの差が生じるのかを深掘りしていきます。

含み益と含み損の定義を整理しよう

まず前提として、「含み益」とは保有中の資産が購入価格を上回っている状態、「含み損」とは逆に下回っている状態です。どちらも未実現であるため、実際に売却していなければ損益は確定していません。

にもかかわらず、「含み損は重く、含み益は軽い」と感じられるのは、私たちの心理が大きく影響しています。

損失回避バイアス:人は損に対して過敏に反応する

行動経済学の代表的な理論「プロスペクト理論」では、人は利益を得ることよりも、損失を被ることに対して2倍以上の感情的重みを感じるとされています。これを損失回避バイアスと呼びます。

たとえば100万円の含み益があっても、「売るまで確定していない」と冷静でいられますが、100万円の含み損を抱えると、「自分はすでに損をしている」と感じ、心理的なダメージが大きくなります。これが「含み損=事実上の損失」と認識されやすい理由です。

税務上の扱いの違いも影響

税制の観点でも、含み益や含み損は実現しない限り課税・控除の対象にはなりません。しかし、含み損を抱えると、確定申告を意識した損切りや、翌年以降の損益通算を見据えた売却など、現実的な損失処理が考慮されることになります。

一方で、含み益については「売れば課税される」というデメリット意識が先行しやすく、むしろ保持し続けたい気持ちが働きやすいのです。

心理的アンカーと回復への焦り

投資家は購入価格を“基準点”(アンカー)として無意識に意識します。このため、株価が下がると「戻ってほしい」「元の価格で売りたい」という強い希望が生まれます。

この回復への執着が、含み損を“未確定ながらも現実的な損失”として捉える要因となります。一方、含み益は「いつか売れば得られる利益」として、期待感を持ちながらも不確定要素と見られがちです。

実例:同じ価格差でも感じ方は真逆

たとえば、Aさんが100万円で買った株が80万円になった場合、含み損20万円に強いストレスを感じ「早く元に戻ってほしい」と思うでしょう。逆に、Bさんが100万円で買った株が120万円になっていても、「利益があるけど、もう少し上がるかも」と思い、利益確定を先延ばしにします。

このように、同じ20万円という差でも、損失は深刻に捉えられ、利益は現実味を持ちにくいのです。

含み益を“絵に描いた餅”にしないために

含み益をしっかり利益に変えるには、利確(利益確定)のルールを事前に設けておくことが重要です。「○%上がったら一部売却」「◯万円の利益で売る」など、自分なりのルールを持つことで、“絵に描いた餅”を現実の餅に変えることができます。

また、含み損に対しても「損切りルール」や「ロスカットライン」を設けておけば、ダメージを最小限に抑える行動が可能です。

まとめ:感情ではなくルールで含み損益を扱おう

「含み損は事実上の損失、含み益は絵に描いた餅」という感覚は、投資家の心理と経験から来ています。行動経済学的にも根拠があり、感情面ではこの認識は自然なことです。

しかし、投資で成功するためには、感情に流されず、損益が“実現されるまでは未確定”であるという事実に立ち返ることが重要です。ルールに基づいた判断を心がけ、含み益・含み損の両方に冷静に対応できる力を養いましょう。

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