“玄人投資家”が大損しにくい本当の理由―リスク認識と心の一致がカギ

資産運用、投資信託、NISA

「玄人投資家はリスクを把握しているから大損しない」というイメージを持つ方も多いでしょう。本記事では、リスクそのものと“心の中のリスク感”が一致していることが、なぜ損失を抑える上で重要なのかを、心理的・実務的な観点から解説します。

リスクを数値化するだけでは不十分な理由

投資の世界では、ポジションサイズ・損失許容額・想定ドローダウンといった数値管理が重視されます。しかし、数値だけが整っていても、投資家自身がそのリスクを〈本当に受け入れているか〉という心の準備が整っていなければ、計画どおりに実行できないことがあります。

例えば、損切りラインを「‐5%」と定めていても、実際に価格が下がり始めると「もう少し耐えられるのでは」「戻るかもしれない」といった感情が入り、ラインを超えてホールドしてしまう。このように、数値と心理がズレると、損失が拡大する可能性があります。 [参照]

心の中のリスク感と現実のギャップが起こす落とし穴

研究によれば、投資家の〈リスク認知〉と〈実際に受けるダメージ〉が一致していないと、意思決定の質が低下することが報告されています。例えば、恐怖・貪欲・後悔といった感情が判断を歪める原因であるとされています。 [参照]

実例として、初心者トレーダーが「最大でも10万円しか使わない」と宣言していたにもかかわらず、含み損が膨らむにつれて「取り返したい」心理が働き、最終的に数十万円の損失を抱えてしまったケースがあります。こうしたケースでは、最初の“10万円リスク”という認知がぶれてしまったことに起因しています。

玄人投資家が損失を抑えやすい構造–リスクと心の一致

では、なぜ玄人(プロ)と呼ばれる投資家が比較的損失を抑えることができるのか。その理由として、以下のような構造が挙げられます:

  • リスク許容度を明確に定めている:損失の最大値を数値で定義し、事前に受け入れる心理的準備も整えている。
  • シナリオ別の対応が予め用意されている:逆行した際のルール(損切り/利益確定)を自動的に実行できる体制が整っている。
  • 感情をモニタリングし、勝手に運用を逸脱しない:市場の急変時でも冷静に行動できる心理的余裕を持っている。

これらが揃うことで、「心の中のリスク感」と「数字としてのリスク」が一致し、結果的に損失が大きくならないという流れが生まれます。

初心者・中級者がこの構造を取り入れるためのステップ

誰でもこの構造を意識して取り組むことができます。おすすめのステップは以下です:

  • まず、自分が「どれだけの金額が下落しても耐えられるか」を明確にし、それに対してポジションサイズ・リスク許容額を設定する。
  • 次に、「もし価格がこの水準まで下がったらこうする」という逆行時の手順(損切りルール・プロフィットターゲット)を文書化しておく。
  • 定期的に自分のトレードを振り返り、「あのときなぜ離脱できなかったか」「感情がどう影響したか」を記録・分析する。 [参照]

例えば、Bさんは1トレードのリスクを「資金の2%」と決め、さらに「損失が2%を超えたら即撤退」と宣言しました。トレード後の反省では、「含み損が1.8%になった時にドキドキして売れなかったが、宣言通り行えていれば−2%で済んだ」という気づきを得て、次の週以降は実効性が高まりました。

まとめ

結論として、玄人投資家が大損しにくい背景には、〈リスクを数値化しているだけでなく、その数値を心理的に受け入れている〉という構造があります。つまり、心の中のリスク感=実際に受け入れられる損失額が一致していることが、損失を抑えるうえで非常に重要なのです。

投資で重要なのは“先に数字を決める”ことと、“その数字を自分の心が理解・納得している”こと。その2つが揃って初めて、冷静で安定した運用が可能になります。ぜひ自分自身のリスク構造を見直すきっかけにしてください。

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