生成AIやロボットが急速に普及すると、人間が行ってきた仕事を機械が代替し、生産コストが下がる可能性があります。そのため、将来はモノやサービスの価格が下がる「デフレ」が起こるのではないか、さらに大量失業や株価暴落につながるのではないか、という議論があります。
特にS&P500や全世界株式(いわゆるオルカン)などへ長期投資している人にとって、「AIが経済構造そのものを変えるなら、株式を持ち続けて大丈夫なのか」は重要なテーマです。ただし、AIによる生産性向上=デフレ=株価暴落と一直線に結び付けることはできません。生産性、物価、企業利益、雇用、金利などを分けて考える必要があります。
この記事では、AI・ロボットによるデフレの可能性と、S&P500や全世界株式への投資にどのような影響が考えられるのかを整理します。なお、将来の株価や物価を確実に予測することはできないため、以下は特定商品の売買を推奨するものではありません。
AI・ロボットが普及すると本当にデフレになるのか
AIやロボットには、企業の生産性を高める可能性があります。たとえば、これまで10人で行っていた業務をAIの支援によって5人で処理できたり、工場のロボット化によって同じ時間で生産できる商品の数が増えたりすれば、1単位の商品やサービスを生産するためのコストを下げられる可能性があります。
OECDもAIを生産性や長期的な経済成長へ影響を与える可能性のある技術として研究しており、2025年の分析では、AIによる労働生産性の押し上げ幅は国によって異なるものの、今後10年間に一定のプラス効果をもたらすシナリオを示しています。[参照]
たとえば、AIによってソフトウェア開発費が下がり、ロボットによって製造費が下がれば、企業同士の競争によって商品の販売価格が下がることがあります。この意味では、AI・ロボットには物価を押し下げる方向の力が存在すると考えられます。
しかし、技術革新によって生産コストが下がることと、経済全体が持続的なデフレになることは同じではありません。需要が同時に拡大したり、賃金が上昇したり、新しい商品やサービスへの支出が増えたりすれば、経済全体の物価が必ず下落するとは限らないためです。
「AIでデフレになる」と「大量失業する」は分けて考える
AIについて特に注意したいのが雇用への影響です。IMFは、世界の雇用の約40%がAIの影響を受ける可能性があり、先進国ではその割合が約60%に達するとの分析を公表しています。一方で、AIは人間の仕事を単純に消滅させるだけではなく、人間を補完して生産性を高めるケースも想定されています。[参照]
実際、技術革新では「消える仕事」と「新しく生まれる仕事」が同時に存在します。自動車の普及によって馬車関連の仕事が縮小する一方、自動車メーカー、ガソリンスタンド、整備工場、自動車保険など新しい産業が発達したのが分かりやすい例です。
AIについても同じような変化が起きる可能性があります。事務作業などの一部が自動化される一方で、AIシステムの開発・運用、半導体、データセンター、電力設備、ロボット、サイバーセキュリティなどへの需要が増える可能性があります。
もっとも、移行期には深刻な問題が発生する可能性があります。IMFの研究では、AI導入度の高い米国地域において雇用人口比率の低下が大きかったとの分析も報告されています。したがって、AIによる雇用への悪影響を単なる杞憂として扱うことも適切ではありません。[参照]
デフレになったら株価は必ず暴落するのか
ここで重要なのが、デフレ=株価下落とは限らないという点です。株価を長期的に左右する重要な要素の一つは企業が将来どれだけ利益やキャッシュフローを生み出せるかだからです。
たとえば、ある企業の商品価格が10%下がったとしても、AIやロボット導入によって製造コストが30%下がれば、利益率はむしろ改善する可能性があります。反対に価格が10%しか下がらなくても、人件費などのコストがほとんど下がらなければ利益は悪化する可能性があります。
つまり投資家にとって重要なのは、単純な物価の上げ下げではなく、売上高・利益率・生産性・金利・需要などが最終的に企業価値へどう影響するかです。
一方で、需要不足によって商品が売れず、企業が値下げし、利益減少から人員削減が起こり、それによってさらに消費が減少するような「悪いデフレ」になれば話は別です。このケースでは企業業績が悪化しやすく、株式市場にとって大きな下落要因になり得ます。
AIによる生産性向上は企業利益を増やす可能性もある
AI時代を考えるうえで見落としやすいのが、AIを「企業の仕事を奪う存在」ではなく企業が利用する生産設備の一種として見る視点です。企業は利益を増やす目的でAIやロボットへ投資します。
たとえば年間100億円の人件費や外注費が必要だった企業が、AIによって同じ仕事を70億円で実現できるようになったとします。売上高が変わらなければ、単純化すると30億円分だけ利益を増やせる余地が生まれます。
さらに生産性向上によって商品価格を下げられれば、それまで高くて購入できなかった消費者にも市場が広がる可能性があります。パソコン、通信、半導体などの世界では、性能当たりの価格が大幅に低下する一方、市場そのものが拡大してきた例があります。
OECDはAIが今後の生産性を押し上げる可能性を分析しており、AIを単純な「デフレ装置」と見るよりも、生産能力と経済成長を変化させる技術として捉えるほうが実態に近いといえます。[参照]
S&P500を保有する場合のAI時代のリスク
S&P500は米国の代表的な企業で構成される株価指数です。そのためAIによって米国企業の利益が拡大すれば恩恵を受ける可能性がある一方、AI関連企業への期待が過度に株価へ織り込まれている局面では、期待が崩れた際に大きく調整する可能性があります。
特に注意したいのは、「AIが普及するか」だけではなく、AIによって生まれる利益と現在の株価のバランスです。優れた技術であっても、将来の成長期待を大幅に織り込んだ価格で購入すれば、その後の投資収益率が低くなることがあります。
またS&P500は多数の企業へ分散されていますが、株式である以上、市場全体の下落リスクから逃れることはできません。米国SECも、指数連動型ファンドには対象指数を構成する証券と同様の市場リスクが存在すると説明しています。[参照]
オルカンならAI時代のリスクを回避できるのか
全世界株式型のインデックスファンドは、米国だけではなく日本、欧州、新興国など多数の国・地域の企業へ分散投資します。このため一つの国や企業だけへ投資する場合と比べて、個別企業・特定国への集中リスクを抑えられることが特徴です。
しかし、世界株式への分散投資は「株式市場そのもののリスク」をなくす方法ではありません。世界同時不況になれば、各国の株価が同時に下落することもあります。
AIによる大量失業が世界的な需要減少につながり、企業利益が大幅に悪化するようなシナリオでは、全世界株式も大きく下落する可能性があります。逆にAIによって世界企業の生産性と利益が長期的に増加するなら、世界株式はその成長企業を指数の構成銘柄として取り込んでいく可能性があります。
つまりオルカン型の商品は「AIショックを避ける商品」というより、どの国・どの企業がAI時代の勝者になるかを事前に正確に予測することが難しいため、世界中へ広く投資する考え方と捉えると分かりやすいでしょう。
AI時代に想定しておきたい3つのシナリオ
将来を一つの予測だけで考えるより、複数のシナリオを想定しておくと投資リスクを整理しやすくなります。
| シナリオ | 経済への影響 | 株式への主な影響 |
|---|---|---|
| AIによる高成長 | 生産性・所得・需要が拡大 | 企業利益増加なら株価にはプラス要因 |
| 生産性向上+低インフレ | 価格上昇が抑えられながら経済成長 | 利益率次第では株式にプラス |
| 大量失業+需要減少 | 消費減少・デフレ・景気後退 | 企業利益減少から大幅下落の可能性 |
最も警戒すべきなのは3番目ですが、それが必ず実現すると現時点で断定することはできません。AIが人間を代替する速度、新しい雇用が生まれる速度、政府の財政政策、中央銀行の金融政策、所得再分配制度などによって結果は大きく変化します。
そのため「AIが発達するから株を全部売る」「AI企業が成長するから株を全力で買う」という二択ではなく、複数の未来が存在することを前提に考えることが重要です。
長期投資では「予測が外れた場合」まで考える
AI、ロボット、デフレなどの長期テーマを投資判断へ取り入れる際には、自分の予測が正しい場合だけでなく、予測が完全に外れた場合にも生活を維持できるかを考えることが大切です。
たとえば「AIで株式市場が暴落する」と予想して現金だけを保有したものの、実際にはAIによる生産性向上で企業利益と株価が大きく伸びる可能性もあります。反対にAIによる成長だけを信じて資産の大半を株式へ投入した直後に世界的な不況が起こる可能性もあります。
このような予測不能性への対策として、生活防衛資金を確保する、投資期間を長く取る、株式だけでなく必要に応じて現金や債券なども組み合わせる、といった方法があります。適切な資産配分は年齢、収入、家族構成、投資期間、損失への耐性によって異なるため、万人共通の正解はありません。
まとめ:AIによるデフレは株価暴落と同義ではない
AIやロボットの普及によって生産性が向上し、商品・サービスの価格を押し下げる力が強まる可能性はあります。また、一部の仕事がAIに代替され、雇用や所得格差へ大きな影響を与える可能性についても、IMFやOECDなどが研究を進めています。
一方で、「AI普及→デフレ→大量失業→株価暴落」という流れが必然的に起こると決まっているわけではありません。生産性向上によって企業コストが低下し、利益や実質所得が増加するシナリオも考えられます。技術革新による価格低下と、需要不足による不況型デフレは区別して考える必要があります。
S&P500や全世界株式にも当然ながら暴落リスクはあり、AI時代になってもそれはなくなりません。ただし、AIが企業利益を拡大させる可能性もあるため、「AIが発達するから株式を持つこと自体が危険」と単純化するのも適切ではありません。
長期投資では未来を一点予測するよりも、AIが予想以上に成功する未来、期待ほど普及しない未来、深刻な雇用問題を引き起こす未来など、複数のシナリオのどれになっても致命傷を負わない資産配分を考えることが重要です。AI時代だからこそ、未来を当てることよりも「未来を外しても耐えられる投資」を意識する価値が高まるでしょう。
こんにちは!利益の管理人です。このブログは投資する人を増やしたいという思いから開設し運営しています。株式投資をメインに分散投資をしています。


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