株式の信用取引では、同じ銘柄について買建てと売建てを同時に保有する「両建て」という方法があります。さらに両方の建玉へ逆指値を設定し、相場が動いた方向だけを残せば、上昇でも下落でも利益を狙えるように見えます。
しかし、買いと売りを同時に建てて損失側だけを損切りする仕組みそのものが、安定した利益を生み出すわけではありません。重要なのは、その後に相場がどこまで一方向へ動くか、損切り幅に対して利益をどこまで伸ばせるかです。両建てには売買手数料、金利、貸株料などのコストも関係するため、仕組みを理解してから利用する必要があります。
買建てと売建てを同時に持つ「両建て」とは
信用取引における買建ては、株価が上昇すると利益、下落すると損失になる取引です。一方、売建て(空売り)は株価が下落すると利益、上昇すると損失になります。
同じ銘柄を同じ株数だけ同時に買建て・売建てすると、基本的には片方の利益ともう片方の損失が相殺されます。たとえば株価1,000円で100株ずつ両建てし、株価が1,050円になれば、単純化すると買建ては5,000円の含み益、売建ては5,000円の含み損です。
つまり、両建てした瞬間から相場の方向を当てなくても利益が出るわけではありません。同数量を同価格付近で建てた場合、値動きによる損益はおおむね相殺されるからです。
逆指値で負けた側を切れば利益になるのか
ここで考えられるのが、買建てと売建ての双方に逆指値を設定し、相場が動いたときに損失となった建玉だけを決済する方法です。その後も同じ方向へ株価が進めば、残った建玉の利益を伸ばすことができます。
たとえば1,000円で買建てと売建てを行い、株価が1,020円になったところで売建てを損切りしたとします。この時点で売建てには1株あたり約20円の損失が発生します。一方、買建てには約20円の含み益があります。
その後1,050円まで上昇すれば買建ての利益を伸ばせます。しかし、売建てを損切りした直後に株価が1,000円へ戻れば、買建ての含み益も消えてしまいます。つまり、この戦略で利益が出るためには損失側を切った後にも相場が十分に同じ方向へ進むことが必要です。
最大の弱点は「往復する相場」にある
この方法が苦手とする典型的な値動きが、一定範囲を上下するレンジ相場です。逆指値を置いた価格を一時的に突破したものの、その直後に反対方向へ戻る「ダマシ」が発生すると不利になります。
たとえば1,000円から1,020円へ上昇したため売建てを損切りした直後、株価が980円まで下落したとします。今度は残した買建てが損失になります。最初から売建てだけを持っていれば利益になる値動きでも、途中で売建てを手放しているため、その利益を受け取れません。
さらに、1,020円、1,000円、980円、1,000円というように上下を繰り返す市場では、逆指値が何度も価格変動に巻き込まれる可能性があります。「動いた方向を残す」ことと「その方向へトレンドが続く」ことは別問題なのです。
利益を決めるのは勝率だけではなく損益比率
売買戦略を評価するときは、「何回当たったか」だけではなく、平均利益と平均損失を含めて考える必要があります。一般には、1回あたりの期待損益を「勝率×平均利益-敗率×平均損失-取引コスト」のように考えると理解しやすくなります。
たとえば10回取引して6回成功したとしても、成功時の平均利益が1万円、失敗時の平均損失が2万円なら、利益は6万円、損失は8万円となり、コストを考慮する前から合計2万円のマイナスです。
逆に勝率が40%でも、利益になるとき平均3万円、損失になるとき平均1万円なら、10回では利益12万円に対して損失6万円という計算になります。したがって、両建て+逆指値についても、どこで損切りするかだけでなく、残ったポジションをどこで利益確定するかまで決めなければ戦略として評価できません。
両建てでは取引コストにも注意が必要
両建てにはもう一つ見落としやすい問題があります。同じ銘柄について買いと売りの両方を建てるため、単純な片方向の取引より建玉が増えることです。
信用取引では証券会社や取引方法によって、売買手数料のほか、買建てに対する金利、売建てに対する貸株料などが発生する場合があります。制度信用の売建てでは銘柄の需給状況によって逆日歩が発生する場合もあります。
また逆指値は「指定価格で必ず約定する」という意味ではありません。一般的な逆指値注文では、条件に到達すると注文が市場へ発注される仕組みのため、急激な値動きでは想定した価格から離れて約定することがあります。利用する証券会社の注文ルールを事前に確認しておくことが重要です。
数字で比較すると両建ての特徴が分かりやすい
簡略化した例として、1,000円で100株の買建てと100株の売建てを同時に行ったケースを考えてみます。手数料や金利などは考慮しません。
| 値動き | 売建て | 買建て | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 1,000円→1,020円 | 約2,000円の損失 | 約2,000円の含み益 | ここで売建てを損切り |
| その後1,050円へ | 決済済み | 約5,000円の利益 | 買建てを決済すれば差し引き約3,000円 |
| その後1,000円へ戻る | 約2,000円の損失が確定済み | ほぼ損益なし | 全体では約2,000円の損失 |
この例から分かるように、両建てしたこと自体が利益を生むのではありません。最初の損切り幅である20円を超えて、残した方向へ価格がさらに進んではじめて利益を確保しやすくなります。
現実にはここへ取引コストやスリッページなどが加わります。そのため、机上ではわずかにプラスになるルールでも、実取引では期待値がマイナスになることがあります。
「上か下か分からない」場面で両方持つ必要があるか
両建て+逆指値の考え方は、「方向が分からないので両方を持ち、動いた後で不要な方を切る」という発想です。しかし別の方法として、最初はポジションを持たず、一定の価格を突破してからその方向へ新規注文を出すという考え方もあります。
たとえば1,000円付近でもみ合っている銘柄について、1,020円を明確に上抜けたら買い、980円を下抜けたら売り、といった条件を検討する方法です。この場合もダマシは避けられませんが、最初から買いと売りを同時に保有する必要はありません。
どちらが有利かは銘柄の値動き、注文方法、保有時間、売買コストなどによって変わります。「両建てだから安全」「ブレイク後に入れば安全」というものではなく、過去の取引データなどを使って検証する必要があります。
安定して利益が出るかはバックテストで検証する
売買ルールを思いついたときに重要なのは、数回の成功例ではなく十分な回数で検証することです。エントリー価格、逆指値幅、利益確定条件、取引時間、対象銘柄、取引コストなどを具体的なルールとして固定すると検証しやすくなります。
特に「反発しそうなところ」「上がりそうなら残す」といった主観的な条件では、後から都合よく判断を変えられてしまいます。たとえば「直近高値を1%突破」「損切り幅1%」「利益確定3%」など、第三者が見ても同じ取引になる条件へ置き換えることがポイントです。
実際のお金を投入する前に過去データやデモ取引などで試し、勝率、平均利益、平均損失、最大連敗、最大ドローダウン、取引コストを確認すると、戦略の特徴をより客観的に判断できます。
まとめ:両建て+逆指値は「自動的に勝てる仕組み」ではない
同じ株を買建て・売建てし、値動きに応じて損失側だけを逆指値で決済する方法では、残した方向へ大きなトレンドが続けば利益を得られる可能性があります。一方、損切り後に価格が反転すると、確定した損失だけが残る場合があります。
そのため「上昇と下落の両方を持てば、どちらに動いても勝てる」という単純な構造にはなりません。利益を安定させられるかどうかは、損切り幅、利益確定条件、トレンドの継続性、勝率、売買コストなどを含めた最終的な期待値で決まります。
信用取引には元本を超える損失が生じる可能性もあります。実際に両建てや逆指値を利用する場合は、利用する証券会社の信用取引・注文方法のルールを確認し、まずは小さな取引やシミュレーションで仕組みとリスクを把握することが重要です。
こんにちは!利益の管理人です。このブログは投資する人を増やしたいという思いから開設し運営しています。株式投資をメインに分散投資をしています。


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