株式投資の話では、「これからは完成品メーカーより部品メーカー」「最終製品を作る会社より、その裏側を支える会社を買うべき」といった意見を耳にすることがあります。半導体やAI、EVなどの成長市場を考えると、いかにも投資に詳しそうな考え方に聞こえます。
しかし、「完成品メーカーより部品メーカーへ投資すればよい」という法則はありません。部品メーカーが大きく成長する市場もあれば、完成品メーカーがブランド力やサービスによって高い利益を得る市場もあります。
投資を学び始める高校生などに伝えるなら、企業を「完成品か部品か」の二択で分類するより、「その産業で誰が利益を得るのか」「他社が簡単に代替できない強みがあるか」を考えるほうが、企業分析の基本を身につけやすくなります。
「完成品より部品メーカー」という考え方には一理ある
部品メーカーへの投資が注目される理由の一つは、一つの最終製品メーカーだけに依存せず、複数企業の成長から恩恵を受けられる場合があることです。
例えば、ある新しい製品市場でA社、B社、C社が激しくシェア争いをしていたとします。その3社すべてへ重要部品を供給する企業があれば、「最終的にどのブランドが勝つか」を当てなくても、市場全体の拡大によって部品需要が増える可能性があります。
これはゴールドラッシュになぞらえて「金を掘る人ではなく、つるはしやシャベルを売る会社に注目する」という考え方で説明されることもあります。ただし、実際の株式投資では部品メーカーにも競争や価格下落があるため、この考え方だけで投資判断はできません。
半導体・AIでは「部品」より広いサプライチェーンを見る
現代の代表例が半導体です。スマートフォン、自動車、データセンター、AI機器など多くの完成品・サービスに半導体が使われています。しかし半導体産業そのものも、設計、製造、製造装置、材料、検査など複数の段階に分かれています。
例えばAI市場が拡大すると、AIサービスを提供する企業だけでなく、半導体、半導体製造装置、データセンター関連設備などにも需要が波及する可能性があります。ここで重要なのは「部品メーカー」という言葉ではなく、成長市場のサプライチェーンのどこに利益が蓄積するのかを考えることです。
経済産業省も半導体・デジタル産業について政策や関連資料を公表しており、半導体が幅広い産業を支える重要な基盤となっていることが分かります。[参照:経済産業省 半導体・デジタル産業戦略]
部品メーカーにも大きな弱点がある
一方で、部品メーカーなら安全というわけではありません。完成品メーカーから厳しい値下げ要求を受ける企業もありますし、技術革新によって従来の部品そのものが不要になることもあります。
特定の大口顧客への依存度が高い企業では、その顧客が発注先を変更しただけで業績が大きく悪化する可能性があります。また優れた技術を持っていても競合他社が同等品を大量生産できれば、価格競争に陥ることがあります。
例えば売上高の大部分を一つの完成品メーカーに依存している部品会社と、世界中のメーカーへ代替困難な部品を販売している会社では、同じ「部品メーカー」でも事業の性質はかなり違います。投資ではこの違いを見る必要があります。
完成品メーカーだから投資対象として不利とは限らない
完成品メーカーには、消費者から直接ブランド価値の対価を得られるという強みがあります。強いブランド、販売網、ソフトウェア、アフターサービスなどを持つ企業では、単純な製造原価だけでは説明できない利益を生み出せる場合があります。
さらに現在は「完成品メーカー」と「部品メーカー」の境界そのものが曖昧です。ハードウェアを販売しながらソフトウェアやクラウドサービスでも稼ぐ企業もあれば、部品メーカーが完成品メーカー以上の技術的な主導権を持つ産業もあります。
したがって「完成品メーカーはもう駄目」という前提で企業を除外すると、優れた投資機会を逃す可能性があります。企業の分類より、競争力と利益構造を見るほうが重要です。
見るべきなのは「その会社でなければ困る理由」
企業研究をするときに役立つ問いが、「顧客がその会社の商品を使わなくなったら、どれくらい困るのか」です。これは完成品メーカーにも部品メーカーにも使える考え方です。
特許や独自技術がある、品質認証に時間がかかり簡単に供給先を変更できない、圧倒的なブランド力がある、巨大な利用者ネットワークがある、といった事情があれば競争優位につながる可能性があります。
逆に、誰でも作れる部品を価格だけで競争している企業なら、市場自体が成長しても利益率が上がらない場合があります。「成長産業にいる会社」と「利益が成長する会社」は同じではない点が重要です。
良い会社を見つけても株価が高すぎれば別問題
投資では企業選びだけでなく、株価も重要です。将来有望な部品メーカーを見つけたとしても、その期待がすでに株価へ十分織り込まれていれば、好業績でも株価が上がらないことがあります。
例えば利益100億円の企業が将来200億円へ成長すると予想されていても、市場参加者がそれ以上の成長を期待した価格で株を買っていれば、「利益が2倍になったのに株価は下がる」ということさえ起こります。
企業を見る際には売上高や利益の成長だけでなく、PERなどの株価指標、利益率、キャッシュフロー、財務状態、競合企業との比較も必要です。金融庁も資産形成について、リスクとリターンの関係や長期・積立・分散投資などの基本を解説しています。[参照:金融庁 資産形成の基本]
高校生に伝えるなら「部品を買え」より面白い教え方がある
投資を初めて学ぶ人に「これからは部品メーカー」と断言するより、「身近な成長商品を一つ選んで、その商品ができるまでに誰が儲かるのか調べてみよう」と伝えるほうが実践的です。
例えばスマートフォンなら、端末メーカーだけでなく半導体、ディスプレイ、電子部品、製造装置、通信、ソフトウェアなどへ視野を広げます。電気自動車なら完成車、電池、半導体、モーター、素材、充電設備などを調べられます。
そのうえで「売上が増えたとき最も利益が増えそうなのはどこか」「競合が参入しにくいのはどこか」「一社への依存が強すぎないか」と考えると、単なる銘柄当てではなく企業分析の練習になります。
個別株だけが投資ではない
特に投資初心者の場合、「次に伸びる部品メーカーを当てなければならない」と考える必要はありません。個別企業には、その企業特有の業績悪化や不祥事、競争力低下などのリスクがあります。
金融庁が資産形成の基本として説明しているように、値動きの異なる複数資産・銘柄へ投資する「分散」はリスクを抑える基本的な方法の一つです。長期的な資産形成と、将来伸びそうな個別企業を研究することは分けて考えることもできます。
例えば資産形成の中心は幅広く分散された投資信託とし、企業研究を楽しみたい部分だけ個別株について勉強する、といった考え方もあります。もちろん投資には元本割れの可能性があり、利益が保証される方法はありません。
まとめ:「完成品より部品」は入口として面白いが投資法則ではない
「完成品メーカーではなく部品メーカーへ投資する」という考え方には、成長市場全体へ部品を供給する企業や、代替困難な技術を持つ企業を発見できるという面白さがあります。投資を学び始めるきっかけとしては十分に価値のある視点です。
しかし、部品メーカーだから将来有望、完成品メーカーだから不利という法則はありません。本当に見るべきなのは、産業の成長性、企業の競争優位、顧客構成、利益率、財務、株価に織り込まれた期待などです。
高校生へ投資の話をするなら「これからは部品メーカーを買え」と結論を教えるより、「完成品が売れたとき、その裏側で一番儲かる会社はどこだろう?」と問いかけるほうが、投資の本質に近い学びになります。答えを覚えるより、産業構造から答えを探す習慣を身につけることのほうが、長い目では役立つでしょう。
こんにちは!利益の管理人です。このブログは投資する人を増やしたいという思いから開設し運営しています。株式投資をメインに分散投資をしています。


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