なぜみんな働くの?投資だけで生活できない理由を中学生にもわかるように解説

資産運用、投資信託、NISA

株式や投資信託などについて学ぶと、「働かなくても投資でお金を増やせるなら、みんな仕事をせずに投資をすればよいのでは?」という疑問が出てくることがあります。これは、お金や経済の仕組みを考えるうえでとても重要な疑問です。

確かに、十分な資産を持っている人であれば、株式の配当や値上がり益、債券の利息などを利用して、労働による収入をほとんど得ずに生活できる場合があります。しかし、投資は元になるお金が必要で、利益が保証されているわけでもありません。そのため、多くの人にとっては、まず働いて収入を得ることが生活と資産形成の土台になります。

さらに、もし本当に全員が働かず投資だけをするようになれば、そもそも投資先となる企業の商品やサービスを作る人がいなくなります。投資で利益が生まれる仕組みを理解すると、実は「働くこと」と「投資すること」は対立するものではなく、社会の中でつながっていることが分かります。

投資でお金を稼ぐには、まず元手が必要

投資だけで生活することが難しい最大の理由の一つは、投資には元になる資金が必要だからです。働けば、自分の時間や能力を提供することで給料を得られます。一方、投資では持っている資産を使って利益を得ることになります。

たとえば100万円を投資して、1年間で5%の利益が出たとします。単純計算では利益は5万円です。100万円という大きなお金を用意しても、年間5万円しか増えない計算になります。

仮に年間300万円を投資収益だけで得たいとします。毎年安定して5%の利益が出ると仮定しても、単純計算では6,000万円の元本が必要です。しかも、実際の投資では毎年必ず5%増えるわけではありません。

投資元本 年5%の利益が出た場合
10万円 5,000円
100万円 5万円
1,000万円 50万円
3,000万円 150万円
6,000万円 300万円

このように、投資による利益だけで生活費をまかなうためには、多くの場合かなり大きな資産が必要になります。その資産を最初から持っていない人は、まず働いて収入を得ながら少しずつ資産を作ることになります。

投資では必ずお金が増えるわけではない

もう一つ重要なのが、投資には損をする可能性があることです。銀行口座にあるお金と違い、株式や投資信託などの価格は上がることもあれば下がることもあります。

たとえば100万円を株式に投資して、翌年に20%下落した場合、資産は80万円になります。その年の生活費としてさらにお金を引き出せば、元本はもっと少なくなります。

働いて毎月給料を受け取っていれば、投資資産が一時的に値下がりしても、生活費を給料から支払うことができます。しかし投資収益だけで生活している場合は、相場が悪い時期にも生活費を資産から取り崩さなければならない可能性があります。

そのため、投資で生活するには単に「平均すると増える可能性がある」だけでは不十分です。値下がりが長く続いた場合にも生活できるだけの資産や現金を用意しておく必要があります。

そもそも投資の利益はどこから生まれるのか

「投資すればお金が増える」と聞くと、お金そのものが自然に増殖しているように感じるかもしれません。しかし、投資の利益には経済活動という背景があります。

たとえば株式投資では、投資した企業が商品やサービスを販売し、利益を生み出します。その利益の一部が配当として株主へ支払われたり、企業の成長への期待から株価が上昇したりすることで、投資家が利益を得られる可能性があります。

つまり、その企業では誰かが商品を開発し、工場を動かし、営業をし、接客をし、配送をし、経理をし、会社を運営しています。投資によって生まれる利益の土台には、誰かの仕事と経済活動があります。

投資家は企業へ資金を提供する側、働く人は商品やサービスを生み出す側という違いはありますが、どちらも経済を動かす役割を持っています。

もし全員が働かず投資だけをしたらどうなる?

ここで「それなら全員が投資家になればいいのでは?」と考えてみましょう。しかし、本当に全員が働かなくなると、投資によって利益を得る仕組みそのものが成立しなくなります。

たとえば、ある食品会社の株を世界中の人が買ったとしても、その会社で誰も働かなければ食品は製造できません。スーパーにも商品を運べず、売上も発生しません。結果として企業は利益を出せなくなります。

スマートフォン会社でも同じです。設計する人、部品を製造する人、ソフトウェアを開発する人、販売する人などが働かなければ商品を作れません。企業が利益を出せなければ、配当を支払うことも難しくなり、株式の価値も低下する可能性があります。

投資家だけでは経済は成り立たず、働く人だけでも大きな事業を始める資金が不足することがあります。資金を提供する人と、実際に商品やサービスを生み出す人の両方がいることで経済が成り立っています。

働く人も実は「投資の恩恵」を受けている

働くことと投資することは、必ずしもどちらか一方を選ぶ関係ではありません。実際には、働きながら投資している人も非常に多くいます。

たとえば会社員が毎月30万円の給料を受け取り、その中から生活費を支払い、残った3万円を投資信託などに積み立てる方法があります。この場合、労働によって元手を作り、その一部を投資して将来の資産形成につなげることができます。

若いうちは金融資産が少ない一方、働いて収入を得られる期間は長くあります。そのため、最初から投資だけで生活しようとするより、仕事による収入と長期的な資産運用を組み合わせるほうが現実的なケースが多くなります。

また、会社で働いて経験や技術を身につければ、将来より高い給料を得たり、自分で事業を始めたりできる可能性もあります。自分の能力を高めることも、広い意味では将来の収入を増やすための投資と考えられます。

投資だけで生活している人は実際にいる

もちろん、投資収益や資産の取り崩しだけで生活している人も実際に存在します。十分な金融資産を築いた人、事業を売却して大きな資産を得た人、相続などによって資産を持っている人などです。

たとえば1億円の金融資産があり、その一部から配当や利息などを得ながら生活するのであれば、働かなくても暮らせる可能性はあります。ただし税金、物価上昇、投資損失、長生きするリスクなども考えなければなりません。

さらに、「投資だけで生活している」と言われる人でも、企業分析、不動産管理、ポートフォリオ管理などに多くの時間を使っている場合があります。その場合は、一般的な会社員とは違う形であっても、資産管理そのものが仕事に近い活動になっています。

したがって、投資だけで生活すること自体は不可能ではありませんが、誰でも元手なしですぐできる方法ではありません。

働く理由はお金だけではない

もちろん、多くの人が働く最も大きな理由の一つは生活費を得るためです。しかし、人が働く理由は収入だけではありません。

仕事を通じて技術を身につけたり、社会とのつながりを持ったり、自分が作った商品やサービスで誰かの役に立ったりすることに価値を感じる人もいます。研究、医療、教育、ものづくり、芸術など、仕事そのものに目的や楽しさを感じる人もいます。

逆に、十分な資産ができたことで勤務時間を減らしたり、収入よりやりがいを優先した仕事を選んだりする人もいます。つまり「お金があるなら必ず仕事を辞める」というものでもありません。

働くことには、お金を得る以外にも経験、技術、人間関係、社会参加といった側面があります。その価値をどの程度重視するかは人それぞれです。

投資家は何もしていないのにお金をもらっているの?

この疑問も投資を理解するうえで重要です。投資家は労働を提供しているわけではありませんが、お金を企業や経済活動へ提供し、その資金を失うリスクを引き受けています。

たとえば新しい会社を作りたい人がいたとしても、工場や設備を用意するために10億円必要なら、働く人だけを集めても事業を始められないことがあります。そこで投資家から資金を集めることで、大きな事業を始められるようになります。

その会社が成功すれば投資家は利益を受け取れる可能性があります。一方、会社が失敗すれば投資したお金を大きく失うこともあります。このリスクを引き受ける代わりに、利益を得られる可能性があるのが投資の基本的な考え方です。

つまり、労働者は時間や能力を提供し、投資家は資本とリスク負担を提供しています。役割は異なりますが、経済の中ではどちらにも意味があります。

中学生のうちに一番価値が高い「投資」は何か

中学生の段階では、大きな金融資産を持っているケースは多くありません。そのため、数万円を投資して短期間で生活できるほどの資産を作ろうとするより、将来の選択肢を増やすことのほうが重要です。

たとえば数学、英語、プログラミング、文章力、コミュニケーション能力などを身につければ、将来さまざまな仕事に挑戦できます。金融や経済について勉強することも非常に役立ちます。

仮に10万円を年5%で運用した場合、1年間の増加額は単純計算で5,000円です。一方、新しい能力を身につけることで将来の年収が毎年数十万円、数百万円変わる可能性もあります。

その意味では、若いうちは「金融資産への投資」だけでなく「自分自身への投資」も非常に大きな価値を持つと考えられます。

「働くか投資するか」ではなく両方を組み合わせる考え方

働くことと投資することを、「どちらが得なのか」と対立させて考える必要はありません。多くの人にとって現実的なのは、働いて収入を作り、その一部を投資して資産を育てるという組み合わせです。

若いときは自分の労働から得られる収入が中心でも、長期間投資を続けて金融資産が増えていけば、将来は投資から得られる収入の割合が大きくなる可能性があります。

たとえば20代では収入のほぼ100%が給料だった人でも、何十年も積立投資を続ければ、50代や60代には配当や資産の値上がりなどが家計の大きな支えになるかもしれません。

つまり、仕事によって今の生活と投資元本を作り、投資によって将来の選択肢を増やすという関係です。投資は「働かなくて済む魔法」というより、働いて得たお金を将来のために活用する仕組みとして考えると理解しやすくなります。

まとめ:投資で生活できる人はいるが、投資の利益も誰かの仕事から生まれている

十分な資産があれば、働かずに投資収益や資産の取り崩しで生活することは可能です。しかし、投資には元手が必要であり、利益が必ず出る保証もありません。そのため、多くの人はまず働いて安定した収入を得ています。

そして最も重要なのは、投資で得られる利益の土台にも、社会で働く人たちの経済活動があるという点です。会社の商品を作る人も、サービスを提供する人も、誰も働かなくなれば企業は利益を生み出せず、投資家も利益を得られなくなります。

つまり、「みんなが働く代わりに投資家になればよい」という仕組みにはできません。経済には、働いて商品やサービスを生み出す人と、その活動に資金を提供する人の両方が必要だからです。

現実的には「働くか、投資するか」の二者択一ではなく、働いて収入を得ながら、その一部を長期的に投資して資産を作るという方法が多くの人にとって基本になります。若いうちは特に、お金の投資だけでなく知識や能力への投資も含めて考えることで、将来の選択肢を大きく増やすことができます。

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