非上場企業の株式は市場で自由に売買されないため、その取引価格について不明確な点が多くあります。従業員から安価で株式を買い取る場合、一見双方が納得していれば問題ないようにも思えますが、実は税務上や法的なリスクを伴う可能性があります。この記事では、非上場株の売買における注意点と適切な対応方法について解説します。
非上場株式の取引価格に決まりはあるのか?
非上場株は市場価格がないため、自由に価格を決められるように見えますが、税務上は「時価」での取引が原則とされています。時価よりも明らかに低い価格で取引した場合、みなし贈与や不適切な資産移転と判断されることがあります。
たとえば、現時点の評価額が600万円にもかかわらず、200万円で従業員から買い取ると、差額の400万円について税務署から「贈与にあたる」とみなされる可能性があるため注意が必要です。
売買価格が時価と乖離していた場合のリスク
売却側(従業員)と買い手(会社または経営者)が関係者である場合、その取引は「第三者間取引」ではなく「特殊関係人間の取引」とみなされやすくなります。こうした場合、税務署から「合理的な根拠がない価格設定」として調査対象になることがあります。
仮に価格が不当に安いとされた場合、売却側には「みなし贈与税」が課税され、買い手側にも法人税の加算リスクが生じる可能性があります。
株価評価の根拠を明確にしておくことの重要性
非上場株式の時価は、一般的に「類似業種比準価額法」や「純資産価額法」などで評価されます。簡易的な算定であっても、過去の決算書、利益水準、資産の状況などから合理的な株価を見積もることが重要です。
例えば、「直近3期の平均利益から推計した類似業種比準価額に基づくと、1株あたり60万円と評価される」など、明確な数値根拠があれば、税務署からの指摘を避けやすくなります。
株式売買時に実務的に必要な手続き
- 株式譲渡契約書の作成:価格、譲渡日、譲渡理由などを明記。
- 取締役会の承認:譲渡制限がある場合は会社の承認が必要。
- 株主名簿・株券の更新:売買後の管理を明確に。
これらの手続きが不備だと、後日トラブルの元となるため、法務・会計専門家のチェックを受けておくことをおすすめします。
第三者評価や税理士への相談も選択肢に
会社側が買い取る場合、独自に評価せずに第三者評価機関や税理士に依頼し、適正な価格であることを客観的に証明してもらう方法もあります。これにより、税務調査時にも安心して対応できます。
また、従業員側にとっても納得できる説明材料となり、トラブル防止につながります。
まとめ:合意だけでは安心できない非上場株の取引
非上場株式を低価格で売買することは可能ですが、「合意があるから大丈夫」とは限りません。税務上はあくまでも「時価」が基準とされるため、合理的な評価と手続きが求められます。
もし評価額と乖離した取引を行うのであれば、必ずその理由や根拠を明文化しておき、税理士や弁護士のアドバイスを受けるようにしましょう。

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