外部不経済とピグー税:公害問題に対する経済学的アプローチとは?

経済、景気

企業が生産活動の中で公害などの外部不経済を引き起こしている場合、経済学では市場の失敗とみなされます。こうした外部不経済に対処する手段の一つが、政府が税金を課すという方法です。この記事では、公害問題に対して企業に課税した場合、市場にどのような変化が生じるのかを経済学の視点から解説します。

外部不経済とは?

外部不経済とは、ある経済主体の行動が、他の経済主体に対して負の影響を与えることです。たとえば、工場が排出する煙や廃水が周囲の住民に健康被害や環境被害を与える場合が該当します。

このようなコストは市場価格に反映されないため、企業は実際よりも低いコストで生産を続け、市場における供給量が過剰になる傾向があります。

ピグー税とは?

このような市場の失敗を修正するために導入されるのが「ピグー税(Pigovian Tax)」です。これは、外部不経済のコストに相当する税金を企業に課すことで、企業の生産コストを引き上げ、市場均衡を社会的に望ましい水準へと導く制度です。

たとえば、1単位あたりの生産が環境に100円の損害を与えている場合、その100円を課税することで、生産量を抑制する効果が生まれます。

供給曲線が左へシフトする理由

企業に税金を課すと、企業のコスト構造が変わり、供給コストが上昇します。その結果、企業は同じ価格での供給を減らし、全体の供給曲線が左にシフトします。これは、ある価格において提供される数量が減ることを意味します。

経済学のグラフで表すと、課税前に比べて供給が減少し、新たな均衡点は価格が高く、数量が少なくなる方向に移動します。

均衡価格と均衡数量の変化

供給曲線が左にシフトすることで、次のような変化が生じます。

  • 均衡価格:上昇する
  • 均衡数量:減少する

つまり、税金により企業のコストが上がり、供給が減ることで価格が上がり、消費者の需要が減少するため、最終的に取引量も減少するというわけです。

実例:炭素税と温室効果ガスの削減

現実社会でも、ピグー税の一例として「炭素税」が存在します。これは、CO2排出量に応じて企業に課税する仕組みであり、環境負荷の高い生産活動を抑制するための手段とされています。

例えば、スウェーデンでは1990年代から炭素税を導入し、経済成長を維持しながらもCO2排出量の大幅削減に成功しています。

まとめ:税による外部不経済の是正

公害のような外部不経済に対しては、適切な課税によって市場の歪みを修正することができます。供給曲線が左へシフトし、価格は上昇、取引量は減少するというのが経済学的な標準的結論です。

企業活動が社会全体に与える影響を正しく評価し、そのコストを内部化させることで、より持続可能で公平な経済の実現が期待されます。

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