国際経済の基本指標のひとつである「国際収支」は、国の経済活動のバランスを知るうえで重要なデータです。中でも資本収支(金融収支)は、海外とのお金のやり取りを示すものですが、ときにその見方が直感と逆になることがあります。特に「米国の債券や株式を外国が買っているのに、なぜ米国の資本収支が赤字になるのか?」という疑問は非常に多くの方が感じるポイントです。この記事では、その仕組みをわかりやすく解説します。
国際収支とは?基礎知識のおさらい
国際収支は、大きく分けて「経常収支」と「資本収支(金融収支)」から構成されています。経常収支は貿易やサービス収支、一次所得などの実体経済の取引を、資本収支は主に証券投資や直接投資などの金融取引を示します。
たとえば、アメリカが日本に対してトヨタ車を輸入すると、それは経常収支における赤字(輸入>輸出)として記録されます。一方、アメリカ人が日本株を買えば、それはアメリカからお金が出ていくため、資本収支における赤字です。
外国が米国の資産を買うと「米国の資本収支は黒字」になるのが正しい
実は質問の前提に少し誤解があります。外国が米国の国債や株式を購入する場合、米国の資本収支は「黒字」になります。
なぜなら、外国から米国にお金が「入ってくる」からです。たとえば日本の機関投資家が米国債を買えば、日本からドルが米国に送られ、その資金が米国の証券市場に流れます。これは米国から見れば資本流入、すなわち黒字となるのです。
なぜ混乱が起こる?「売れる=赤字」と感じてしまう理由
この混乱の一因は、「売れる=儲かる=黒字」という日常感覚とのズレにあります。米国が自国の資産(国債や株)を「売った」から黒字だと感じるのは自然ですが、国際収支の文脈では「お金の出入り」が基準になります。
したがって、「外国がお金を払って米国資産を買う」=「米国にお金が入る」=「資本収支の黒字」と整理するのが正しい理解です。
実例で理解する:2020年の米国国際収支データ
例えば2020年、パンデミックの影響でアメリカの経常収支は大きな赤字でしたが、それを補う形で資本収支は黒字でした。これは各国の中央銀行や投資家が米ドル建て資産を安全資産として買い支えたためで、米国に資金が流入したのです。
つまり、資本収支の黒字は、国外からの「信用」や「投資」を意味する場合もあるのです。
資本収支が赤字になるケースとは?
一方で、米国企業が海外に工場を建てたり、外国株を買ったりすると、資本が「国外に出ていく」ため、資本収支は赤字になります。これは資産の海外移転を示すものです。
したがって、資本収支の「赤字」と「黒字」は、「売った・買った」ではなく、「お金が出たか入ったか」で判断する必要があります。
まとめ:資本収支の理解には「視点の切り替え」が必要
米国にとって外国が資産を買ってくれることは、国際収支上では「資本収支の黒字」にカウントされます。「売れた=黒字」ではなく、「お金が入った=黒字」という基準で見るのがポイントです。
国際収支の仕組みを理解することで、経済ニュースや各国の動きに対する見方がより深まります。米国の経済動向やドルの流れに注目する際は、資本収支の数字もあわせてチェックしてみましょう。

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