下級財における代替効果と所得効果の違いを徹底解説|なぜ方向が逆になるのか?

経済、景気

経済学における「下級財」は、価格が下がっても消費が減ることがあるという、直感に反した動きをする財です。この下級財において、代替効果と所得効果がそれぞれ異なる方向に働く理由は、消費者の選好行動の本質にあります。本記事では、初心者にもわかりやすく図解的にそのメカニズムを解説します。

そもそも「下級財」とは何か?

下級財(inferior good)とは、所得が増えると消費量が減る財のことを指します。代表的な例として、インスタントラーメンや格安スーパーの食材などが挙げられます。収入が少ないときはこれらの財に頼るものの、収入が増えるとより高品質な商品に切り替えるため、消費が減る傾向があります。

下級財=質よりコストを優先する場面で選ばれる財と覚えると理解しやすいでしょう。

代替効果とは何か?

代替効果(substitution effect)は、ある商品の価格が下がることで、他の商品からその商品へと需要がシフトする現象です。たとえば、うどんの価格が下がれば、同じ炭水化物のそばやパスタよりうどんが安くなるため、うどんの消費が増えるという動きです。

この代替効果は常に「価格が下がれば需要が増える」という方向で働き、財の種類(上級財・下級財)にかかわらずプラスの効果となります。

所得効果とは何か?

所得効果(income effect)は、価格の変化によって実質所得が変わったときに生じる消費の変化です。価格が下がると、同じお金でより多く買えるようになる=実質的に裕福になるため、その影響で消費行動が変わります。

通常の財(上級財)では、価格が下がれば「余裕ができてもっと買う」ため、所得効果もプラスです。しかし、下級財では逆で、所得が増えると「もっと良いものに乗り換えたい」となるため、消費量が減る=マイナスの所得効果となります。

なぜ代替効果はプラスで、所得効果はマイナスになるのか?

たとえば、格安のレトルトカレーが下級財だとします。これの価格が下がると、同じ価格帯の別商品よりも「相対的にお得」になるため、代替効果としては消費が増えます。

しかし、価格が下がったことで「余裕が出た」消費者は、そのお金を使って「もっと美味しい高級カレー」や「外食」など、より満足度の高いものに支出を移します。これが所得効果による消費の減少です。

つまり、代替効果は価格の相対的魅力による「選び変え」、所得効果は実質所得の変化による「生活水準の見直し」と理解することで、この逆方向の現象が腑に落ちます。

ギッフェン財との違いにも注意

なお、代替効果と所得効果の合計で価格が下がったのに消費が減るような財は「ギッフェン財」と呼ばれます。ギッフェン財では、所得効果のマイナスが代替効果のプラスを上回るため、価格が下がっても需要が減るという極端なパターンになります。

下級財はこのギッフェン財のような動きをすることもありますが、通常は代替効果の方が強いため、全体としては需要が増える傾向にあります。

まとめ:消費者の合理的行動が生む興味深い経済現象

下級財における代替効果と所得効果の方向の違いは、消費者の行動原理を考えると極めて合理的なものです。代替効果は他の財との相対価格による選好の変化、所得効果は実質所得の変化による生活水準の見直し。経済学的に整理すれば、複雑なように見えて筋道だった現象であることが見えてきます。

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