経済指標の中でもよく混同されるのが「国内総生産（GDP）」と「国民総所得（GNI）」です。特に「GDPには外国人の利益も含まれるのに、どうしてGNIの計算式が成り立つのか」と疑問に感じる方は少なくありません。この記事では、そうした疑問に対してわかりやすく、具体例を交えながら解説します。
GDPとは何か：国内で生み出された付加価値の総額
GDP（Gross Domestic Product）は、「国内」で生み出された付加価値の合計を示します。ここでの「国内」とは日本の地理的範囲を意味し、国籍を問わず、日本国内で生産活動を行った者による所得が対象です。
したがって、たとえば日本に進出している外国企業の利益や、外国人労働者が日本で得た賃金もGDPには含まれます。
GNIとは何か：国民が得た総所得
一方、GNI（Gross National Income）は「国民」が得た所得に注目します。つまり、日本の法人・個人が世界中で得た所得を集計したものです。
GNIの式は次のように表されます。
GNI = GDP + 海外からの純所得
この「海外からの純所得」とは、日本人が海外で得た所得（利子・配当・給与など）から、外国人が日本で得た所得を差し引いたものです。
なぜこの式が成り立つのか？
たしかにGDPには外国人の所得が含まれているため、そのままでは「日本国民全体の所得」にはなりません。そこで調整項目として使われるのが「海外からの純所得」です。
具体的には次のような調整が行われます。
- GDP：日本で稼がれた総所得（外国人分も含む）
- － 日本で働く外国人や外国企業が得た所得
- ＋ 日本人や日本企業が海外で得た所得
このようにして、「日本人（日本企業）が得た所得の合計」＝GNIが求められます。
具体例で理解を深める
たとえば、以下のような状況を考えてみましょう。
- トヨタ（日本企業）がアメリカ工場で100億円の利益を得る
- アップル（米国企業）が日本で50億円の利益を得る
この場合、
- GDPには「アップルの日本での50億円」が含まれます
- GNIでは「トヨタの100億円」が加えられ、「アップルの50億円」は除かれます
つまり、GNI = GDP + 100億円 − 50億円 という形になるのです。
まとめ：GNIとGDPの違いを押さえることがポイント
GDPは「日本という国の中」で生み出された価値、GNIは「日本国民が得た所得」の合計。この違いを押さえることで、「GDP + 海外からの純所得 = GNI」という式が意味するところがはっきり見えてきます。
外国人の利益が含まれるという誤解は、両者の定義の違いを正しく理解することで解消できます。国際的な経済比較や政策評価において、指標の違いは非常に重要ですので、ぜひこの機会に整理しておきましょう。
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