2024年の米不作を受けて、日本の米価格は大きく上昇し、2025年に入ってもその高値が続いています。これに伴い、JA(農協)関係者から「これまでの米価格は安すぎた」という声が出てきました。実は、この発言には単なる価格評価だけではない、農業構造や経済的背景が深く関わっています。
米価格が上がって初めて現れた『価格が安すぎた』という評価
これまでJAから「米価が安すぎる」という声があまり聞かれなかったのは、価格が低迷している状況下で強く訴えても市場や政策が大きく動くことが少なく、現実的な効果が薄かったためです。価格が上がった今だからこそ、世論や政策決定層に対する説得力を持つ発信が可能となり、声が大きくなってきたと見ることができます。
例えば、2023年以前に米価下落が続いた際も、農家は収入減に苦しんでいましたが、「市場原理だから仕方ない」といったムードが広がっており、JA側も強くは出られませんでした。
農業経営の視点から見る米価の評価
実際に農家が米を1俵(約60kg)生産するのにかかるコストは、平均で1万円以上。一方で、2020年~2022年ごろの相場は8,000円前後にまで落ち込んでいた時期もあり、これは赤字生産と言っても過言ではありません。
このような状況を経て、現在の1万円を超える価格が続く中で「ようやく採算が合う」と感じる農家が増えたため、「これまでの価格が異常に安かった」との見方が強調されるようになったのです。
需給バランスの変化が生んだ価格転換点
2024年は全国的な天候不良により、作況指数が90台に落ち込んだ地域も多く、供給量が減少。その一方で、政府の備蓄米放出や海外産米の調達にも限界があるため、市場の需給バランスが一気に逼迫しました。
これによって、価格は急騰し、農家サイドにとっては久しぶりの高収益期が訪れたことになります。JAがこのタイミングを逃さず、「今後も持続可能な農業のために価格維持が必要」とアピールしているのです。
政策的な背景とJAの思惑
日本の米市場は自由化が進む一方で、補助金政策や交付金制度との連動が依然強く、価格の安定は農家だけでなくJA経営にも直結します。価格が高値安定しているうちに「適正価格」の基準を引き上げることで、今後の政策的支援や価格維持策への布石にしようという狙いもあると考えられます。
また、輸入農産物との価格競争を意識し、国内米のプレミアム化(ブランド戦略)を強調するためにも、「安すぎた」という過去の評価を打ち出しておくことは重要なのです。
消費者からの視点も無視できない
一方、消費者からすれば「高すぎる」「生活に負担がかかる」との声もあります。そのため、JAや農水省も単に価格維持を主張するだけではなく、安全性・国産志向・環境負荷の低さなどの価値と合わせて価格の正当性を訴える必要があるのです。
実際、国産米の消費促進キャンペーンでは、「フェアトレード」と同じような倫理的消費の観点からのアプローチも始まっています。
まとめ:価格上昇は“主張のチャンス”を生んだ
JAが「これまでの米価格は安すぎた」と主張し始めたのは、単なる価格の問題ではなく、農業の持続性・採算性・政策アピールの絶好の機会であるからです。消費者とのバランスを取りながらも、今後もこの論調は続く可能性があります。
農業や経済の構造的課題を知る上で、米価格の動向は社会全体の課題にもつながっているのです。

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