国際収支統計を理解するうえで、「経常収支」と「金融収支」の関係に注目することは非常に重要です。しかし、報告書やグラフによっては符号(プラス・マイナス)の扱いが異なり、混乱を招くことがあります。この記事では金融収支の符号の違いとその理由、そしてどちらの形式が一般的なのかについて解説していきます。
国際収支統計の基本構造
国際収支統計(BOP)は、以下の関係式で構成されます。
経常収支 + 資本移転等収支 + 金融収支 + 誤差脱漏 = 0
この式の目的は、取引全体のバランスが取れていることを示すことです。つまり、一国の対外取引全体を記録する帳簿のようなもので、どこかでマイナスになれば、どこかでプラスになる仕組みになっています。
金融収支の符号の扱い方
金融収支には二通りの記載方法が存在します。
- 【方法1】「経常収支 + 資本移転等収支 + 金融収支 + 誤差脱漏 = 0」
この場合、資本流入(=対外負債の増加や国内資産の減少)はプラス、資本流出(=対外資産の増加や国内負債の減少)はマイナスと記載されます。 - 【方法2】「経常収支 + 資本移転等収支 − 金融収支 + 誤差脱漏 = 0」
こちらでは、資本流入はマイナス、資本流出はプラスとして扱われます。
つまり、どちらも同じ取引を表しているのですが、計上する際の数学的な符号の立て方が違うだけです。
なぜ金融収支の記述法が異なるのか
この違いは、国や機関ごとの慣習、または統計を作成する目的の違いによって発生します。
たとえば、日本の財務省や日銀が発表する国際収支統計では、「金融収支をプラス」として記載する形式(方法1)が一般的です。一方で、IMFや一部の英語圏の経済学習資料では、金融収支を「差し引く形式(方法2)」で表現することもあります。
アメリカの統計と経常収支の負の相関
質問にある「アメリカの経常収支と金融収支が負の相関になっているグラフ」は、この符号の違いを反映している可能性があります。つまり、経常収支が赤字(マイナス)であれば、それを補う形で金融収支が黒字(プラス)となるため、自然とグラフは鏡写しのような形になります。
グラフによっては、意図的に「−金融収支」としてプロットしている場合もあるので注意が必要です。
どちらの表記がメジャーか?
日本国内の統計や学習では、金融収支をプラス記載(資本流入がプラス)とする「方法1」が主流です。しかし、海外では「方法2」も広く使われています。結論としては、どちらも正しいが、使用目的や文脈に応じて読み替える必要があるということです。
学術論文や経済レポートを見る際には、符号の扱いがどうなっているかを必ず確認しましょう。
まとめ:文脈を理解して使い分ける
金融収支の符号の違いは、国際収支統計を読むうえでの基本的な注意点の一つです。形式的にはどちらの表記も正当であり、重要なのは背後にある実際の資本移動の意味を理解することです。
金融・経済データを扱う際には、「何をプラス、何をマイナスとしているか」を丁寧に読み解く習慣を持つことが、誤解を避ける第一歩になります。

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