経済指標の中でも注目度の高い「消費者物価指数(CPI)」は、物価の上昇・下落を示す重要なデータです。しかし、同じCPIでも「前月比」と「前年同月比」で予想との乖離が生じることがあります。この記事では、なぜこのようなブレが生まれるのかを、具体的な仕組みとともにわかりやすく解説します。
CPIの「前月比」と「前年同月比」の違いとは?
まず、CPIの計算方法の違いを押さえておくことが大切です。「前月比」は直前の月と比較した物価変動を、「前年同月比」は1年前と比べた年間ベースでの物価変動を示します。
たとえば6月のCPI前月比は「5月→6月」の変化、前年同月比は「昨年6月→今年6月」の変化を比較しています。対象とする期間が異なるため、当然ながら結果も異なり、予想とのブレも起こりやすくなります。
「前月比」が予想通りでも「前年同月比」がズレる理由
一見すると、「直近の前月比が当たっていれば、その積み重ねである前年同月比も当たるはず」と感じられるかもしれません。しかし、年間を通した過去11か月のデータが前年同月比に影響するため、1か月のデータが正確でも全体が合致するとは限りません。
たとえば昨年の同月が特異的にインフレまたはデフレだった場合、今年のデータが平常でも前年同月比に大きな変動が出ることがあります。
基準値の違いが予測に影響する
前年同月比の算出では、1年前のデータが「基準」として使用されます。もし1年前の水準が一時的に高騰していたり、供給制約やエネルギー価格などの要因で異常値だった場合、それが現在の数値に対して過大または過小な変化率として表れてしまいます。
一方、前月比は季節調整を加味した上で、短期的な物価動向を捉えるため、予想精度が比較的高い傾向があります。
予想モデルが異なることもブレの要因に
経済予測機関やアナリストは、前月比と前年同月比で異なる予測モデルを用いることがあります。短期の需要・供給や価格動向を重視する前月比予測に対して、前年同月比はより複雑なマクロ経済モデルが使われる傾向があります。
このモデルの違いにより、前月比の予想が当たっていても、前年同月比のズレが大きくなるケースがあるのです。
実例:2023年後半のアメリカCPI
2023年10月、アメリカCPIは前月比が市場予想と一致する0.2%の上昇だった一方、前年同月比は予想より高い3.7%となり市場に波紋を広げました。これは前年10月にエネルギー価格が一時的に下落していた影響で、比較対象が低すぎたことが一因でした。
このように、過去の数値が変動していれば、それに引きずられて前年同月比に差が出ることがあります。
まとめ:CPIを読むには時間軸の理解が不可欠
「前月比」と「前年同月比」は似て非なる指標であり、それぞれ異なる時間軸と影響因子によって構成されています。前月比が当たっているからといって、前年同月比も正確とは限らず、そのギャップは統計的にも自然な現象です。経済指標を読み解く際には、この違いを理解しておくことが、より精度の高い情報分析につながります。

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