通貨発行と消費税廃止は可能なのか?現実的な視点で読み解く財政政策の限界と課題

経済、景気

「国はお金をいくらでも刷れるんだから、消費税なんていらない」という意見を耳にすることがあります。確かに現代の日本のように自国通貨建てで国債を発行できる国では、理論上は無制限に通貨を発行できます。しかし、そこには経済のバランスや国際的な信用など、複雑な要素が絡み合っています。

通貨発行にはインフレリスクが伴う

政府が無制限に通貨を発行すれば、理論的には国民に還元されて景気は良くなります。しかし、その反面として「モノの価値に対してお金の価値が下がる=インフレ」が発生します。これは過去にジンバブエやベネズエラなどで起きたハイパーインフレのような事態を招くリスクもあります。

たとえば、日銀が通貨を増発し続けて公共事業や社会保障に使えば、短期的には需要が拡大して景気が刺激されますが、労働力や資源が限られている中で、需要過多となれば物価が急上昇し、国民生活に深刻な打撃を与えかねません。

消費税は安定財源として重要な役割を果たしている

消費税は所得や利益に関係なく広く浅く課税される税であるため、景気に左右されにくい「安定財源」とされています。法人税や所得税は景気が悪化すると税収が落ち込みますが、消費税は比較的安定しているため、社会保障の財源として重宝されています。

また、日本は高齢化が進んでおり、年金や医療費の負担が年々増しています。これらを賄うには一定の税収が必要で、消費税の廃止はそのバランスを大きく崩しかねません。

法人税増税や内部留保課税は万能薬ではない

「富が集中しているから法人税を上げればいい」という考えもありますが、これには副作用もあります。法人税を上げすぎると、企業が国内での投資を控えたり、海外へ拠点を移すリスクもあります。結果的に雇用の喪失や経済の縮小につながる恐れも。

また、内部留保とは企業が将来の投資や不測の事態に備えて蓄えた資金です。これに課税することは一見公平に思えますが、企業活動の健全性を損なうことにもなりかねません。

MMT(現代貨幣理論)は夢の政策か現実逃避か

近年注目されているMMT(現代貨幣理論)は、「自国通貨建てなら政府の財政赤字は問題ない」という理論ですが、実際の政策への応用には慎重論が根強いです。アメリカでも賛否が分かれており、議会やFRBは全面的に支持しているわけではありません。

例えば、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス議員などがMMTに言及していますが、バイデン政権では伝統的な財政規律の維持が基本方針とされています。理論と現実のギャップを埋めるには、極めて慎重なステップが求められるのです。

消費税を減税または廃止する場合の代替財源の課題

仮に消費税を廃止すると、年に約20兆円の税収が消えます。その代わりとなる財源をどこから確保するかが大きな課題です。所得税や法人税を同額上げればいいという単純な話ではなく、経済活動への影響や公平性の観点も考慮しなければなりません。

たとえば、低所得層ほど消費税の負担感は大きいとされる一方で、逆進性を和らげる給付付き税額控除などの制度も導入されています。代替策としての現実的な案を提示できなければ、消費税廃止論は政治的に支持を得るのが難しいでしょう。

まとめ:理想論と現実のバランスを見極める

「通貨発行で財源を確保し、消費税を廃止する」という考え方には一理ありますが、経済全体のバランスや将来への影響を考えると慎重な議論が求められます。税制や財政は一国の経済の土台であり、単純な答えがない複雑な問題です。

大切なのは理想を掲げるだけでなく、その裏にある現実とどう向き合うかを理解し、持続可能な社会に向けてバランスの取れた政策を目指すことではないでしょうか。

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