為替レートはさまざまな要因で変動しますが、その中でも「購買力平価(PPP)」は、長期的な為替相場の理論的基準とされる重要な概念です。この記事では、インフレ率の違いから為替レートがどの方向に動くかを、購買力平価に基づいて具体例とともにわかりやすく解説します。
購買力平価とは?
購買力平価(Purchasing Power Parity:PPP)とは、2つの国の物価水準を比較して為替レートが決まるという理論です。「同じ商品が異なる国で同じ購買力になるように為替が調整される」と考えるのが基本です。
PPPには「絶対的購買力平価」と「相対的購買力平価」の2種類があり、今回は後者に注目します。相対的購買力平価は「各国のインフレ率の差」によって、為替レートがどう変化するかを示します。
相対的購買力平価と為替レートの変化
相対的購買力平価では、次の式が基本になります。
為替レートの変化率 ≒ 国内のインフレ率 − 海外のインフレ率
たとえば、日本のインフレ率が2%、アメリカが4%なら、円は2%分の円高になると理論上は予測されます。
これは、アメリカの物価が日本より速く上昇しているため、ドルの購買力が相対的に下がる → 1ドルあたりの価値が減少する → その結果、1ドルを買うのに必要な円が少なくなる(円高)という流れです。
具体例で理解する:インフレ率の差と為替の動き
仮に現在の為替レートが1ドル=150円とします。アメリカのインフレ率が4%、日本が2%であれば、差は2%。この差分だけ、為替レートが動くと仮定した場合、
150円 × (1 - 0.02) = 147円
このように、2%の円高が理論値となり、1ドル=147円になることが予想されます。
なぜインフレ差で為替が動くのか?
インフレ率が高い国の通貨は、実質的な購買力が落ちていくため、長期的にはその通貨の価値が下がります。購買力平価はこの「購買力の低下分」を為替で補うことで、国際間で均衡を保とうとする理論です。
つまり、物価の上昇が早い国の通貨は、相対的に安く評価されるようになり、その国の通貨は「売られやすく」なります。
実際の為替相場とのズレ
実際の為替市場は、金利差・政治リスク・経常収支・投機など多くの要因で変動しており、購買力平価だけで説明できるものではありません。ただし、長期的なトレンドとしてはPPPに近づく傾向があるといわれています。
例えば、円安が進行していた時期に日米の物価上昇率を比較すると、理論値よりも実際の円安幅が大きくなるなど、乖離はしばしば見られます。
まとめ:購買力平価で円高・円安の方向を読むには
・インフレ率が日本より海外の方が高ければ、相対的に円高方向に動く。
・円高か円安かを見極めるには「自国(日本)のインフレ − 相手国のインフレ」で計算。
・相対的購買力平価は為替の長期的トレンドをつかむ目安として活用できる。
短期的には為替市場はさまざまなノイズに影響されますが、中長期的な視点で為替のバリュエーションを理解するために、相対的購買力平価は非常に有効なツールの一つです。

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