米国債が含み損になる理由とは?満期保有でも損失と見なされる仕組みを解説

経済、景気

「米国債は満期まで持てば額面で償還されるのに、なぜ含み損が発生するのか?」という疑問は、債券投資を始めたばかりの方にとって非常に分かりづらいポイントです。この記事では、米国債をはじめとする債券が含み損となる仕組みと、その背景にある金利との関係について、初心者にもわかりやすく解説していきます。

債券の価格と金利の関係:逆相関の原則

債券は「金利が上がると価格が下がる」という逆相関の関係を持っています。これは、債券の利回りが固定されているため、市場金利が上昇すると相対的に既発債の魅力が下がり、その分市場価格が下落するという仕組みです。

例えば、表面利率2%の米国債を金利1%の時に購入した場合、投資家にとっては魅力的な商品です。しかし、その後市場金利が4%まで上昇すると、2%しか利息を受け取れない債券の価値は相対的に下がり、売却価格も下落することになります。

含み損とは何か?帳簿上の評価損に注意

含み損とは、保有している資産の市場価格が購入価格を下回ったことで、まだ売却していない段階でも評価上の損失が発生している状態を指します。これは特に、会計上「時価評価」を求められる金融機関や機関投資家にとっては重要な概念です。

個人投資家の場合でも、証券口座の評価額に「評価損」として反映されます。たとえ満期まで保有すれば元本が返ってくるとしても、途中の市場価格が下がっている間は「含み損」という形で見える化されるのです。

実例で理解する:米国債で含み損が出るケース

例えば、あなたが2022年に100万円分の10年満期の米国債を年利1.5%で購入したとします。その後、FRBの利上げにより市場金利が5%に上昇した場合、同様の10年債は5%の利回りで新たに発行されるため、あなたの1.5%債券は市場で値下がりします。

この結果、同じ10年債でも購入時より価格が下落し、90万円前後の価値に評価されることになります。売却すれば実損となり、保有し続けても「含み損」として帳簿上には残るのです。

満期まで保有すれば問題ない?落とし穴とは

「満期まで保有すれば額面で戻るから損はしない」と考えるのは一理あります。しかし、以下のような注意点も存在します。

  • 途中で売却が必要になった場合、時価が下がっていれば実損になる
  • インフレにより実質的な購買力が目減りする
  • 他の高利回り商品に資金を移動できず、機会損失が発生する

特に、長期債を保有している場合には、市場金利の上昇リスクを過小評価しないことが重要です。

会計基準や投資方針によって影響が異なる

企業や金融機関では、保有資産の時価評価が義務付けられていることが多く、その場合は債券の含み損が財務諸表上に大きな影響を与えることがあります。米国の銀行破綻リスクでも、保有債券の評価損が問題となった事例が見られました。

一方、長期保有を前提とした個人投資家や年金基金などでは、評価損をあまり気にせずに満期保有を続けるスタンスがとられることもあります。つまり、どのような目的で債券を保有しているかによって「含み損」の意味合いも変わってくるのです。

まとめ:含み損を正しく理解し、投資判断に活かす

米国債に含み損が発生するのは、主に金利変動による市場価格の下落が原因です。満期まで保有すれば額面通りの償還は受けられますが、その間に時価が下がれば帳簿上の含み損が発生します。

投資判断を行う際には、金利変動リスクや保有目的、流動性の必要性などを総合的に考慮し、自身のリスク許容度に応じた戦略を立てることが重要です。含み損を過度に恐れず、その仕組みを理解した上で、長期的な視点で投資に臨みましょう。

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