なぜ公共投資は減税よりも国民所得を増やすのか?乗数効果から読み解く財政政策の力

経済、景気

経済政策において、国民所得を増やす手段としてよく取り上げられるのが「減税」と「公共投資」です。どちらも景気刺激策の代表ですが、理論的には公共投資の方がより高い経済効果をもたらすとされています。この記事では、その理由を経済学の基本理論や具体例を通じてわかりやすく解説します。

財政政策における「乗数効果」とは?

乗数効果とは、政府支出や減税によって生まれる最初の需要が、消費や投資を通じて経済全体に波及し、最終的に国民所得が増加する仕組みを表す経済学の概念です。たとえば、政府が100億円を支出した場合、それが企業の売上や雇用に波及し、消費が増え、最終的に数倍の経済効果を生む可能性があります。

このとき、公共投資と減税では「最初のインパクト」の形が異なるため、乗数効果の大きさに違いが生まれるのです。

公共投資は直接的に需要を生む

公共投資は、政府が道路や橋などのインフラを建設することで、すぐに公共事業としてお金が企業に支払われるため、直接的な需要創出につながります。施工業者や資材メーカー、労働者への支払いが即座に発生し、それが消費に波及します。

たとえば、地方で新しいダム建設が始まると、その地域の建設業者が仕事を受注し、雇用が生まれ、働く人々の消費も増え、地域全体の経済が活性化します。

減税の効果は一部が「貯蓄」に回る

一方で、減税は家計の可処分所得を増やすことで消費を促そうとする手法ですが、実際には所得の一部が「消費されずに貯蓄に回る」ため、経済全体に流れるお金の量が限定的になります。

特に高所得者層への減税では、消費性向が低く、可処分所得の増加がすべて消費に使われないことが多いため、乗数効果が相対的に小さくなる傾向があります。

実際の経済モデルでの乗数比較

経済学の簡易モデル(ケインズ型)によれば、公共投資の乗数は「1 / (1 – 限界消費性向)」ですが、減税の乗数は「限界消費性向 / (1 – 限界消費性向)」になります。たとえば限界消費性向が0.8の場合、公共投資の乗数は5、減税の乗数は4となり、公共投資の方が大きな効果を持つとされます。

この数値の差は、政府支出が「全額」需要になるのに対して、減税は「一部」しか消費に回らないことから生じます。

公共投資には「外部効果」もある

公共投資は直接的な需要創出に加え、長期的な経済成長を後押しする「外部効果」も期待されます。たとえば、道路整備により物流効率が改善されたり、災害対策施設により地域の安心感が増すなど、民間活動の活発化に寄与する側面もあるのです。

これは、短期的な乗数効果を超えた、潜在成長率の引き上げにもつながる重要な視点です。

まとめ:公共投資は即効性と波及性で優位

国民所得を増やすという観点では、公共投資は即効性・波及性・外部効果の3つの面で、減税よりも強い効果を発揮しやすいとされています。もちろん、財政健全性や投資先の選定も重要ですが、短期的な景気対策や地方活性化を目的とするなら、公共投資の活用は非常に有効な手段と言えるでしょう。

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