マクロ経済学の基本モデルであるIS-LMモデルは、財市場と貨幣市場の均衡を示す重要な理論です。このモデルでは、IS曲線とLM曲線で異なる種類の利子率が使われています。具体的には、IS曲線では実質利子率、LM曲線では名目利子率が用いられます。これらの違いはなぜ生じるのでしょうか?この記事では、その理由をわかりやすく解説します。
IS曲線と実質利子率:投資と消費に影響
IS曲線は「財市場(投資・貯蓄)均衡」を示すもので、企業の投資や消費者の行動に焦点を当てています。企業が投資を決める際に重要なのは、将来得られる収益に対する現在のコスト、つまりインフレを考慮した実質的な金利です。
例えば、名目利子率が3%、インフレ率が2%であれば、実質利子率は約1%となり、投資意欲は高まります。このように、IS曲線は「実質的な資金調達コスト」に反応する投資行動を反映するため、実質利子率を使用します。
LM曲線と名目利子率:貨幣需要に影響
一方、LM曲線は「貨幣市場(貨幣需要と供給)の均衡」を表すもので、人々がどのようにお金を保有するかに注目しています。ここで重要なのは、現金を保有するコスト、つまり預金など金利のつく資産と現金の比較です。
このとき、投資収益の基準となるのは、インフレを考慮しない名目利子率です。なぜなら、現金は名目価値で保有されるため、インフレ率は貨幣需要の判断に直接関わりません。
利子率の違いを図で理解する
図解の例:
利子率の種類 | 使用されるモデル | 影響を受ける要因 |
---|---|---|
実質利子率 | IS曲線(財市場) | 投資・消費などの実質経済行動 |
名目利子率 | LM曲線(貨幣市場) | 貨幣需要、資産選択 |
このように、同じ「利子率」という言葉でも、その意味と役割はモデルによって異なるのです。
インフレ率が変化したときの影響
インフレ率が上昇すると、名目利子率が一定でも、実質利子率は低下します。これにより、IS曲線における投資が増加し、総需要が増える可能性があります。
一方、名目利子率が一定なら、LM曲線には影響しません。つまり、インフレが高まると、IS曲線は右にシフトする一方で、LM曲線は動かないため、利子率と国民所得に変化が生じるという動学的な解釈も重要です。
まとめ
IS-LMモデルにおける利子率の違いは、それぞれの市場が異なる経済主体や行動原理を反映しているからです。IS曲線は実質利子率に反応する投資や消費を、LM曲線は名目利子率に基づく貨幣需要を表しています。この違いを理解することで、マクロ経済分析の精度が大きく高まります。

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