株や先物取引の損失繰越は“延命”できる?両建てで繰越年数を事実上延ばすスキームの合法性と注意点

株式

株式や先物取引で生じた損失は、確定申告を行うことで最大3年間の損失繰越控除が可能です。この制度を活用すれば、翌年以降の利益と相殺して税負担を減らすことができますが、3年目が終わると繰越はリセットされます。そこで「12月に一時的に利益確定し、1月に再び利確すれば、新たに3年間繰り越せるのでは?」という疑問を持つ方もいます。本記事では、この“裏技”とも言える手法の仕組みとリスク、合法性について詳しく解説します。

繰越控除制度の基本:3年間の損益通算

日本の所得税法では、上場株式や先物取引で発生した譲渡損失は、確定申告を行えば最大3年間繰り越すことができます。この制度により、翌年以降の利益から損失分を差し引いて課税対象を減らすことが可能です。

ただし、繰越控除を継続するには、毎年欠かさず確定申告が必要であり、1年でも申告を怠ると繰越分は消滅します。

両建てを利用して損失繰越を“リセット”する仕組み

ある年の12月、同じ銘柄で「買い」と「売り」の両方のポジション(両建て)を取り、含み益がある側を年末に利確(利益確定)します。これにより、損失繰越の最終年度に利益をぶつけて繰越分を消化したことにし、反対ポジションを翌年1月に利確すれば、新たに生じた損失を再度翌年以降3年繰り越せる、という考え方です。

つまり、理論上は「損失繰越のリセット」を合法的に繰り返せるように見えます。

税務上のリスクとグレーゾーン

この手法には重大なリスクがあります。まず、税務署は「租税回避行為」とみなす可能性があります。形式上は利益を確定させていても、実質的なリスク移転やポジション変化がないと判断された場合、税務調査で否認されることがあります。

また、証券会社によっては同一日に「同額・同量」で両建てをして翌年すぐ反対ポジションを決済する行為を監視対象とするケースもあり、取引の意図が明白に節税目的であると判断されれば調査対象となるリスクがあります。

過去の判例や税理士の見解

過去には類似のスキームが問題視された例もあり、税理士業界でも見解が分かれています。合法とされるためには、リスク移転の実態があり、税務的な経済合理性が認められることがポイントです。

例えば、偶発的に年末に一方のポジションだけを利確した場合と違い、「年末・年始をまたいで意図的に繰越を延ばす」取引は明確な意思が見られるため、注意が必要です。

節税の代替手段と合法的対策

節税を目的とするなら、以下のような手段がより安全とされます。

  • NISA枠の活用(譲渡益・配当非課税)
  • 損益通算を早めに行う(早いタイミングで損失を利益と相殺)
  • 長期保有での税負担軽減(一部優遇税制あり)

税理士に相談しながら、リスクの低い対策を行うことが推奨されます。

まとめ

両建てを活用した“損失繰越の延命”は、理論上は実現可能に見えるものの、税務署の視点では形式的な利益確定とみなされず否認されるリスクも存在します。

  • 繰越延命の目的が明確すぎると、税務上はグレーまたは否認対象になりうる
  • 安易な節税目的の両建ては節税効果よりリスクが上回る
  • 合法的な繰越や節税策は専門家のアドバイスを受けて実施することが最も安全

税務調査の対象とならないためにも、節税スキームは慎重かつ合法的に構築することが重要です。

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