アメリカ経済がスタグフレーション(景気停滞と物価上昇の同時進行)に陥る中でも、株式市場はしばしば上昇を見せています。一見すると矛盾するこの現象の背景には、複数の経済的・投資的要因が複雑に絡み合っています。本記事では、スタグフレーション下でも株価が上昇する理由について、実例や投資心理を交えて解説します。
スタグフレーションとは?その定義と経済的影響
スタグフレーションは、経済成長の停滞(stagnation)とインフレ(inflation)が同時に発生する状態を指します。通常は景気悪化時に物価も下がる傾向がありますが、資源価格の高騰や供給制約などにより物価だけが上がるケースがあります。
アメリカでは1970年代のオイルショック時に典型的なスタグフレーションが発生し、実体経済に深刻な影響を与えました。
株価と実体経済は必ずしも一致しない
株価は企業の将来の利益や成長性への期待で決まり、必ずしも現在の経済状況に連動しません。たとえ景気が悪くても、将来的に業績改善が見込まれる企業やセクターには資金が流入するのです。
例えば、2022〜2023年の米国株市場では、ハイテク株を中心としたNASDAQ銘柄が景気後退懸念の中でも買われ、指数が上昇しました。
インフレ耐性のある企業やセクターが評価される
スタグフレーション下でも利益を伸ばしやすい企業、たとえば価格転嫁力のある消費財メーカーや、エネルギー価格高騰の恩恵を受ける石油関連企業などには投資家の注目が集まります。
金利が高くても、インフレ率を上回るリターンを期待できる銘柄であれば投資対象としての魅力があるため、株価が上昇することがあります。
インフレ対策としての株式投資
インフレ時には現金や預金の実質価値が目減りするため、資産を守る手段として株式や実物資産への投資が選ばれます。このようなインフレヘッジとしての需要も株価を押し上げる要因となります。
特にインフレが続くと予想される局面では、金融緩和とは逆に利上げが進んでいても、一定の株式が物価上昇に合わせて強く買われる傾向があります。
AI・テックバブルと市場の楽観論
2023年以降のアメリカ株市場では、AI技術やデジタルインフラ分野への期待から、NVIDIAやMicrosoft、Appleといったテクノロジー株が大きく上昇しました。これにより、S&P500やNASDAQが指数としても上昇基調となったのです。
市場全体が景気悪化を織り込んでいても、一部のグロース株への強い期待が相場全体をけん引する構図が成り立ちます。
中央銀行と市場の“読み合い”が株価を左右する
FRB(米連邦準備制度)はスタグフレーション下でも物価抑制のために利上げを続けますが、市場が「これ以上は利上げできない」「いずれ利下げが来る」と読むと、将来の金融緩和を先取りして株が買われます。
つまり、市場は“将来”を見て動くため、今の景気悪化が必ずしも株安を意味しないのです。
まとめ:株式市場は複雑な“期待”で動く
スタグフレーション下における株高は、一見すると矛盾しているように見えますが、投資家の将来予測や資産防衛行動が要因となっています。インフレ耐性のある企業への資金集中、AIなど成長分野への期待、そして中央銀行との“心理戦”によって、景気停滞下でも株式市場が上昇することは十分にあり得るのです。
今後もマクロ経済の動向を正しく読み解き、柔軟な投資判断が重要となるでしょう。

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