ミクロ経済学で誤解されやすい「粗代替財」と所得効果の関係を図解で解説

経済、景気

ミクロ経済学の学習において、「粗代替財」「所得効果」「価格変化」の関係は混同しやすいトピックのひとつです。特に、2財モデルにおける「x財の価格が下がったとき、y財がx財の粗代替財ならばx財に対する所得効果は必ずプラスである」という命題は、一見正しそうですが、実は誤りです。この記事では、その理由を理論と図解を用いて分かりやすく解説します。

粗代替財とは何か?定義の確認から

まず、「粗代替財(gross substitutes)」とは、ある財の価格が上がったときに他方の財の需要が増える関係にある2財を指します。つまり、x財の価格が上がったときにy財の需要が増えれば、y財はx財の粗代替財です。

ここで重要なのは、粗代替財の関係が示すのは“代替効果”のみであり、所得効果を含んでいない点です。これは後述の誤解の元になります。

所得効果と代替効果の違いを整理する

価格が変化したときの需要変化は、次の2つに分解されます。

  • 代替効果:相対価格の変化によって、より安い財に需要が移る動き
  • 所得効果:実質所得が増減した結果としての需要の変化

たとえばx財の価格が下がった場合、相対的にx財が安くなるため、代替効果としてx財の需要が増える傾向にあります。しかし、所得効果はx財が上級財か劣等財かによって、需要が増えるか減るかが変わります。

「所得効果が必ずプラス」はなぜ誤りなのか

質問の命題では「y財がx財の粗代替財ならば、x財に対する所得効果は必ずプラスである」と述べていますが、これは理論的に正しくありません。なぜなら、粗代替財であるかどうかと、x財の所得効果の符号(プラスかマイナスか)には直接の因果関係がないからです。

たとえば、x財が劣等財だった場合、x財の価格が下がって実質所得が増えたとしても、所得効果としてx財の需要は減る可能性があります。つまり、代替効果でx財の消費が増えても、所得効果で減少すれば、全体としての需要の増減はケースバイケースです。

具体例で考える:x財=インスタント麺、y財=パスタ

仮にx財をインスタント麺、y財をパスタとしたとき、価格の下落によってインスタント麺の代替効果は正(安くなったから買う)が働きます。しかし、所得が増えたことでより質の高いy財(パスタ)に移行する場合、x財に対する所得効果はとなる可能性があります。

このように、x財が粗代替関係にあるからといって、その価格変化に対する所得効果が必ずしもプラスになるとは限らないのです。

補足:スルツキー分解とヒックス分解の視点

価格変化による需要変化の分析には、「スルツキー分解」と「ヒックス分解」という2つのアプローチがあります。どちらも代替効果と所得効果に分解するものですが、分析の立脚点が異なります。

どちらの手法を使っても、粗代替性は主に代替効果にのみ依存し、所得効果の符号とは独立しています。したがって、粗代替の前提があっても、所得効果がプラスである保証はありません。

まとめ:粗代替性と所得効果のプラス性は無関係

「粗代替財ならば所得効果はプラス」という命題が誤りである理由は、粗代替性が示すのはあくまで代替効果であり、所得効果の方向性とは別物だからです。

価格変化に対する需要変化を正しく分析するためには、代替効果と所得効果を切り分けて理解することが不可欠です。ミクロ経済学の理解を深めるうえで、ぜひこの点を押さえておきましょう。

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