経済学の教科書では「寡占市場では価格を上げれば他社は追随せず、下げればすぐ追随する」と説明されることがありますが、実際のビジネスの現場でもこのような現象が起こっているのでしょうか?この記事では寡占市場のメカニズムと実際の事例をもとに、その背景と現実を考察します。
寡占市場とは何か?
寡占市場とは、少数の企業が市場を支配している状態を指します。例えば、通信、電力、石油元売、航空、大手コンビニなどが該当します。
このような市場では、各社の価格決定が他社に与える影響が大きいため、互いの出方を強く意識して行動します。
価格を上げれば追随されず、下げれば追随される理由
企業が価格を上げた場合、他社が追随しないと顧客を失うリスクがあるため、慎重になります。一方、価格を下げると競合もシェアを奪われまいと追随し、価格競争が起こりやすいという傾向があります。
この行動は「価格硬直性」とも呼ばれ、ケインズ経済学などでも理論的に説明されています。企業は損失回避的な心理により、値上げには慎重、値下げには敏感になるのです。
現実にあった寡占市場の価格動向の実例
例1:国内ガソリン価格
日本では石油元売業者が数社に限られているため、価格決定が寡占的です。価格が急騰すると消費者離れを招くため、各社が慎重になります。逆に価格が下がると瞬時に他社も追随し、競争が発生する構造が見られます。
例2:携帯電話通信料金
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクといった大手3社が競合するこの市場でも、過去に一社が値下げした際、他社も数日内に追随した例があります。一方、料金引き上げには慎重で、明確な政府方針や制度改正がない限り、各社が足踏みする傾向があります。
なぜ「上げないが下げる」行動が合理的なのか
このような行動は、企業の利益最大化という目的に基づく合理的判断です。価格を上げると自社だけが売れなくなる可能性があるため、極力回避します。逆に値下げに追随しないと、シェアを奪われるリスクが大きいため、迅速な対応が求められます。
経済学ではこのような現象を「囚人のジレンマ」や「ゲーム理論」で説明することもあります。寡占のプレイヤー間で暗黙の協調が成立しやすい一方で、価格の変更には互いの出方を読む駆け引きが続きます。
価格追随行動の限界と変化の兆し
ただし近年では、ネット通販やMVNO(格安SIM)など、新たな競合が台頭しており、寡占企業の価格行動にも変化が出ています。完全な価格追随行動が崩れるケースも見られるようになりました。
特にオンラインで価格比較が容易になったことで、顧客がすぐに他社へ流れるようになり、寡占企業にも迅速な対応が求められる時代となっています。
まとめ
寡占市場において「価格を上げれば追随されず、下げれば追随される」という行動パターンは、現実の市場でも多く確認されています。ただし、それはすべての状況に当てはまるわけではなく、市場構造や競争環境の変化により行動が変化することもあります。今後は新興プレイヤーの台頭や顧客行動の変化により、従来の寡占理論が修正される局面も訪れるかもしれません。

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