貿易に関するニュースや経済記事でよく登場する「関税分を輸出価格に転嫁する」という表現ですが、初めて聞くと意味がとっさに掴めないこともあるかもしれません。この記事では、この表現が何を意味するのか、誰が関税を負担し、それが価格にどう影響するのかを丁寧に解説します。
関税とは何か?基本の仕組みを整理
まず前提として、関税とは「輸入品に対して課される税金」のことです。この税金は原則として、輸入する側の国が輸入者に課します。
例えば、日本がアメリカから車を輸入する場合、日本政府が日本の輸入業者に対して関税を課す、という構造になります。
「関税を輸出価格に転嫁する」とは?
本来、関税は輸入側の負担ですが、現実の取引ではこの負担が「売る側(輸出側)」の価格戦略に影響することがあります。
関税分を転嫁するとは、輸出企業が、輸出先の国で課される関税負担分を見越して、自社の輸出価格を引き下げることを指します。つまり、関税を上乗せして価格が高くなることを避けるため、あらかじめ値下げしておくわけです。
なぜ転嫁するのか?価格競争力と消費者ニーズ
ある国で高い関税が課される場合、その分を商品価格に上乗せすれば、現地の消費者にとって割高になり、売れなくなります。
たとえば。
- 通常価格が10,000円の商品に20%の関税がかかれば、現地販売価格は12,000円になります。
- それでは売れにくいので、輸出企業が価格を8,500円に下げて販売価格が10,200円程度になるよう調整することがあります。
これが「関税分を輸出価格に転嫁する」例です。最終的に関税を払うのは輸入者でも、価格戦略の影響を受けるのは輸出者も同様なのです。
逆に転嫁しない場合もある
すべての企業が関税分を価格に転嫁するわけではありません。ブランド価値が強い商品や代替品の少ない商品では、輸出価格を維持し、関税分は輸入側が価格に上乗せして販売するケースも多くあります。
特に高級ブランド品や独自技術を持つ製品は「価格を下げない」ことでブランドイメージを守る方針を取ることが一般的です。
実例:アメリカの関税政策と中国企業の価格戦略
2018年以降、米中貿易摩擦でアメリカが中国製品に高関税をかけた際、多くの中国企業は関税分を価格に転嫁してアメリカ市場でのシェアを守ろうとしました。
一方、アメリカ企業が中国市場に輸出する際には、ブランド維持のために価格をあまり下げず、販売量が減るケースも見られました。
まとめ:輸出価格への転嫁は戦略次第
「関税分を輸出価格に転嫁する」とは、関税そのものを払うのではなく、その影響を見越して売価を調整する経済的な戦略です。
関税は輸入者に課せられるものですが、その負担を誰がどのように吸収するかは、ビジネス戦略と市場の状況によって変わります。貿易の実務や国際経済を理解するうえで、こうした価格調整のメカニズムも押さえておくと、より深く世界の流れが見えてきます。

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