「一株3円→次の募集では一株6円になる」という話を聞くと、未公開株の価格がどのように決まるのか、何が価格変化をもたらすのか気になるものです。ここでは、未公開株(いわゆる取引相場のない株式)がどのような論理・仕組みで価格設定されており、価格変化が示す意味も併せて整理します。
未公開株の価格決定の基本構造
上場株式では市場価格が存在しますが、未公開株(非上場・取引相場のない株式)では「市場で売買される価格」が定まっていないため、価格は売主・買主間の交渉でもっともな合意価格となります。([参照]非上場株式の売買価格はどう決まるか)
また、税務上「取引相場のない株式」の評価基準として、〈純資産価額方式〉〈類似業種比準方式〉〈配当還元方式〉などの計算手法が定められています。([参照]国税庁:取引相場のない株式の評価)
価格が変化する主な要因
未公開株の価格が例えば「一株3円→6円」というように変化する背景には、次のような要因があります。
- 企業価値の向上・成長期待:売上・利益増加、成長戦略の実行により期待値が上がれば、買い手は高い価格を提示する可能性があります。
- 希少性・交渉力の変化:株式数が少ない・買い手が限定的・売り手が複数いるなど「買いたい人が多い」状況なら価格上昇につながります。
- リスクの低下・資本条件の改善:借入金の減少・負債構成の改善・関連会社との取引整理などでリスクが下がると、価格へのプレミアムが乗ることがあります。
- 税務・評価制度の影響:相続・贈与・承継などのタイミングで税務評価が改定されると、それを参考に価格が調整されることがあります。([参照]非上場株式の譲渡における時価の評価方法)
これらの要因が組み合わさって「なぜ今回の募集では6円になった」という価格変化につながるわけです。
募集価格と実際の取引価格が乖離する意味
募集時の「一株〇円」という価格は、売り手(あるいは発行者)の提示価格であって、必ずしも流通・第三者間での成立価格ではありません。つまり提示価格=交渉成立価格とは限らない点に注意が必要です。
また、提示価格が上がっている場合、次のような意味が考えられます。
- 売り手が企業価値向上を反映して価格を引き上げた
- 買いたい人が増えていて“買い手優位”になっている
- リスクが下がった/成長路線が明確になった
しかし一方で、価格上昇=必ず利益確定が保障されるわけではなく、実質的な業績改善や流動性(売却先・買い手)が伴っていないと、リスクが残ることも理解しておきましょう。
実例でみる価格決定と変化の流れ
〈事例A〉創業5年のITベンチャーが、最初の株式募集で一株2円、事業拡大・収益モデル確立後の第2回募集で一株8円というケース。買手増加・成長期待によって提示価格が上がった典型例です。
〈事例B〉製造業側で、第一期募集後に売上が横ばい・負債増加があったため、次の募集価格を一株1.5円から同1.2円に下げた事例もあります。価格低下は成長期待の後退・リスク上昇を示しています。
まとめ
未公開株(取引相場のない株式)の価格は、主として売主・買主間の合意と企業価値・成長性・希少性・リスクといった複数の要因によって決まります。提示された価格が変化した場合には、「価値が上がった」「買い手が増えた」「リスクが下がった」などが背景として考えられます。しかし、非流動性・情報非対称という特有のリスクも存在するため、価格だけで安心せず、業績・流通可能性・契約条件などを慎重に確認することが不可欠です。
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