2024年3月から4月にかけて、米国のトランプ前大統領による関税政策発表を受けて、一時ドル円相場が140円を割り込む円高となりました。表面的には関税により物価上昇・金利上昇・円安要因となるように見えますが、なぜそのタイミングで円高が進んだのか。本記事では、その背景と市場心理を複数の視点から解説します。
そもそも「関税発表」は何を意味するのか
トランプ氏は2024年春、再選を見越した経済政策の一環として、中国を中心とした海外製品への追加関税強化を示唆しました。これにより市場では「米中貿易摩擦の再燃」や「インフレ懸念」が広がる結果となりました。
関税は輸入品の価格を押し上げることでインフレ要因となり得ますが、同時にそれが「景気悪化」や「世界経済の減速」につながるという懸念が市場を冷やす場合もあります。
リスク回避で「円高」になるメカニズム
為替市場では、世界的な不透明感が強まると「リスクオフ」の動きが強まります。その際に買われやすい通貨の一つが日本円です。理由として、円は対外純資産が世界最大の通貨であり、信頼性が高いと見なされているからです。
つまり、関税強化の発表が「世界的な不確実性の増加」と捉えられ、米国株も軟調となった結果、安全資産である円に買いが集中し、円高に振れたと考えられます。
長期金利の動きは後から追いつく
トランプ関税がインフレにつながり、それがFRBの利上げ(あるいは利下げの抑制)を誘導し、長期金利上昇に波及して円安へ、という流れは「時間差」を伴う傾向があります。
3月〜4月当初は、まずは「企業収益悪化」「貿易摩擦再燃」といったネガティブな経済影響の方が注目されていたため、金利よりもまず為替に反応が出たと見るのが自然です。
ドル売り・円買いの短期筋の動きも影響
為替市場は投機的な短期筋の影響を大きく受けます。関税発表直後には「トランプリスク」の再来を見越したポジション調整が発生し、ドル売り・円買いの動きが一時的に加速しました。
このような動きはチャート分析上も意識されやすく、140円という節目を一時割り込んだのも、テクニカルな売りが重なったと考えられます。
実際の値動きと市場反応の例
2024年3月15日頃にトランプ氏が中国EV・鉄鋼への追加関税を検討と報じられ、3月下旬にはドル円が141円台から一時139円台へ急落しました。報道当日の米国株市場は下落し、VIX指数も一時急上昇するなど、市場全体がリスクオフの流れに傾いた証左といえます。
ただし4月以降、CPIの上昇や雇用統計の強さが明らかになるにつれ、再び「金利差拡大→円安」の構図に回帰していきました。
まとめ:短期の「円高」も中長期的な「円安」に収束しやすい
トランプ関税の発表が「円高」を誘発した背景には、リスク回避による一時的な円買いが大きく影響しています。しかしその後、金利差の現実や米国経済の底堅さが意識され、市場は徐々に「円安」方向へ修正されていきました。
為替は経済ファンダメンタルズだけでなく、市場心理やニュースのタイミング、投機筋の動きなどにも大きく左右されるため、今後も一方向の見通しに過信せず、柔軟な対応が求められます。
最新の為替動向は日本銀行の為替統計やBloombergなどで確認することをおすすめします。

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