インフレが進む現代において、かつてのデフレ時代に適した商慣習や契約が裏目に出ることが増えています。この記事では、売上を先に確定させることが、原価高騰によって逆に大きな損失をもたらすリスクや、具体的な実例をもとにその構造をわかりやすく解説します。
売上先行契約の仕組みと原価変動リスク
売上先行契約とは、製品やサービスの納品前に価格や納期を確定させる商習慣のことで、青田売りとも呼ばれます。顧客側にとってはコストと納期の確定が可能になる一方、提供側は未来のコスト上昇を自己負担するリスクを抱える構造になります。
たとえば、建設業界ではマンションの青田売り契約が典型例です。2020年に1戸5,000万円で契約しても、2023年の竣工時点で資材費が大幅に上昇すれば、実質的な赤字になるケースがあります。
実在する原価高騰による損失事例
有名な事例として、ある建設会社が2021年に大量の受注契約を締結した後、2022年にウッドショックや鋼材価格の急騰を受け、原価が契約時の想定を大きく上回った結果、赤字決算に転落しました。
製造業でも、2022年から続く半導体不足や輸送費の高騰により、数年前に締結したOEM契約が大きな負担となり、納入するたびに損失を生む「逆ザヤ」状態に陥った例が複数報告されています。
契約における価格変動リスクの扱い方
こうしたリスクを回避するために、最近では「原価スライド条項(エスカレーター条項)」を盛り込む動きが進んでいます。これは、原材料費や人件費の変動に応じて販売価格を見直せる仕組みです。
また、契約段階であらかじめ「価格調整期間」を設けておき、半年ごとに見直すといった方法も実務では多く活用されています。特に中長期プロジェクトでは、こうした契約条項が企業の損益に直結します。
売上が立っていることのデメリットとは?
一見すると、売上が早期に立っていることは企業にとって良いことに見えますが、原価変動リスクがある環境ではかえって足かせとなることもあります。売上が立っている=契約が確定しているため、価格交渉や取引先の見直しができなくなるからです。
たとえば、建材価格が2倍になったにもかかわらず、3年前の契約に縛られたまま納品し続けなければならない状態では、時間の経過がそのまま損失拡大につながります。
経営判断としての価格変動対策
こうした事態を避けるためには、契約時点で将来の不確実性を織り込むリスクマネジメントが欠かせません。見積もり段階で適正なマージンを設定する、契約に柔軟性を持たせるなどが代表的な手法です。
また、調達面でも、長期契約で価格を固定するのではなく、市況に応じて複数のサプライヤーと分散契約を結ぶなどの対策も有効です。経理部門や購買部門との連携も重要です。
まとめ:売上の確定が必ずしも安心とは限らない
デフレ時代の発想である「売上を早く立てる」戦略は、インフレ下では逆に企業の首を絞めるリスクとなります。特に原価が読みづらい環境下では、契約内容の見直しや価格変動リスクの吸収方法が企業存続の鍵になります。
過去の成功モデルが現在のリスク要因になる時代。時代の変化に応じた契約戦略と価格設計が、これからの企業に求められる重要な視点です。

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