企業会計や経営分析の中で「内部留保」と「減価償却費」という言葉はよく耳にしますが、それぞれの意味や役割を正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。本記事では、両者の本質的な違いを初心者にもわかりやすく解説します。
内部留保とは?企業が蓄える“将来の備え”
内部留保とは、企業が事業活動で得た利益のうち、配当や役員報酬などで社外に流出させず、企業内部に蓄えている利益のことを指します。
たとえば、企業が1000万円の利益を上げ、うち400万円を株主に配当し、残りの600万円を再投資や備蓄に回すとすれば、この600万円が「内部留保」です。内部留保は貸借対照表では「利益剰余金」として表示され、企業の財務健全性や成長投資の原資として重要視されます。
減価償却費とは?固定資産の価値を分割して費用化する仕組み
一方、減価償却費は建物や機械、車両などの固定資産の購入費用を、使用年数に応じて分割して毎年の費用として計上する会計処理です。
たとえば1000万円の機械を10年使う場合、毎年100万円を減価償却費として費用計上し、実際の支出は初年度のみに発生します。このように、減価償却費は現金の支出を伴わない“会計上の費用”という点で特殊な存在です。
両者の違いを簡単にまとめると?
項目 | 内部留保 | 減価償却費 |
---|---|---|
定義 | 利益の蓄積 | 固定資産の費用按分 |
目的 | 将来の投資や備え | 資産価値の計上調整 |
現金支出の有無 | 蓄積された現金を含む | 支出なし(非現金費用) |
貸借対照表での位置 | 純資産(利益剰余金) | 費用として損益計算書に反映 |
混同されやすい理由と注意点
両者が混同されがちな理由として、どちらも企業内部に“とどまる”数字であり、企業の資金繰りに密接に関係している点が挙げられます。
特に減価償却費はキャッシュフローにプラスの影響を与えるため、「資金が残る」という誤解から内部留保と似たイメージを持たれることがあります。しかし、減価償却費は費用であり、内部留保は利益の一部という根本的な違いがあります。
実際の会計処理での使われ方
企業が決算書を作成する際、減価償却費は「販売費及び一般管理費」などの項目で損益計算書に反映されます。一方、内部留保は決算後の利益処分で株主総会などを経て最終的に「利益剰余金」として計上されます。
また、税務上も減価償却費は損金算入できるため、法人税負担を軽減する効果がありますが、内部留保には直接的な税務メリットはありません。
まとめ:役割が異なるからこそ、正しく理解を
内部留保は企業が蓄えた利益であり、将来の事業資金や備えとしての役割を持ちます。一方、減価償却費は固定資産の費用を分割処理するもので、実際のキャッシュアウトを伴わない非現金費用です。
どちらも企業経営において重要な要素ですが、性質も目的もまったく異なります。経理・会計を理解する上では、この違いを正しく認識しておくことが大切です。

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