政府関係者が政策の発表前に株式などの取引を行い利益を得ることが、公正な市場に対する信頼を損なう行為であることは間違いありません。この記事では、日本とアメリカの法律に基づいて、政府関係者によるこのような行動がインサイダー取引に該当するかを解説します。
インサイダー取引とは何か?
インサイダー取引とは、公開前の重要情報(未公表の重要事実)を利用して有価証券等を売買することであり、公正な市場取引を妨げる行為とされています。
日本では金融商品取引法に基づき、アメリカでは証券取引法(Securities Exchange Act of 1934)に基づき規制されています。どちらの国も、企業内部者だけでなく、公的情報を扱う者が関与する場合でも違法性が問われることがあります。
日本における政府関係者のインサイダー取引規制
日本の金融商品取引法では、会社関係者などが知り得た未公表の重要事実を利用した取引を禁じています。ただし、「政策」などの政府発表情報は企業の内部情報とは異なる性質を持ちます。
それでも、内閣府や経済産業省などに所属する者が、株価に重大な影響を与える経済政策や規制改定などの情報を利用して取引を行えば、『公務員倫理規程』違反や背任、公務員法違反に問われる可能性があります。
また、政府関係者が特定の企業に有利な内容を知りながら株取引を行えば、「重要事実」としてインサイダー取引に近いと判断されるケースもあります。
アメリカにおける政府関係者のインサイダー取引規制
米国では、証券取引委員会(SEC)がインサイダー取引の監視を行っており、政府職員も例外ではありません。2012年に成立した「STOCK Act(Stop Trading on Congressional Knowledge Act)」は、議員や連邦職員が非公開情報を基に証券取引を行うことを禁じています。
この法律によって、議会で得た情報を使って取引した場合にも刑事罰や民事罰の対象となる可能性があります。実際、複数の議員がCOVID-19に関連する内部情報を基に株を売却したとされ、倫理調査が行われた例もあります。
実際に起きた事例とその結果
日本の例:2020年、厚労省職員が新型コロナ対策の給付制度を担当する立場でありながら、関連企業の株を購入した件が報道されました。結果として職務上の不適切行為が認定され、懲戒処分となりましたが、金融商品取引法におけるインサイダー取引とはされませんでした。
米国の例:2020年に米国上院議員の数名が、新型コロナに関する非公開ブリーフィングの直後に株を売却したことが報道されました。一部の議員は自主的に辞任したり、調査の末に不起訴となったものの、道義的責任を問われています。
規制の限界と倫理的側面
法的にはインサイダー取引として明確に処罰されない場合でも、倫理的な問題や職務規律違反として重大視されるケースが多くあります。
とくに政府関係者には「利益相反の回避」や「職務上知り得た機密の厳格な管理」が求められ、証券取引の制限や報告義務が定められています。
まとめ:政府関係者の株取引は法的にも倫理的にも厳重な配慮が必要
政府関係者が政策決定前の非公開情報を利用して株式取引を行う行為は、日本・アメリカともに場合によってはインサイダー取引や職務違反に該当する可能性があります。
たとえ直接的な処罰対象ではなくても、市場の公正性を損なう行為であり、厳しい社会的批判や政治的責任を問われるのは避けられません。今後も透明性と監視の強化が重要です。

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