企業が短期的に赤字となっても操業を継続する理由について疑問を持つ人は少なくありません。収益がマイナスであれば、直感的には操業を止めるべきだと考えられがちですが、経済学では異なる視点が存在します。この記事では、短期的な損失が出ても企業が操業を続ける合理的な理由について、固定費と可変費(変動費)の違いを踏まえてわかりやすく解説します。
固定費と可変費の違いを理解しよう
固定費とは、生産量にかかわらず一定にかかる費用で、家賃や機械の減価償却、人件費の一部などが含まれます。可変費(変動費)は、生産量に応じて変化する費用で、原材料費や外注費、消耗品費などが該当します。
この違いを理解することで、企業が操業を続けるかどうかを判断する上で、どの費用を重視すべきかが明確になります。
操業継続の判断基準は「限界利益」にある
短期的な操業継続の可否は、限界利益(売上高から可変費を引いた利益)が正か負かによって判断されます。限界利益が正であれば、操業することで固定費の一部または全部をまかなえるため、完全に停止するよりも損失を小さくできます。
たとえば、1日の固定費が10万円、可変費が1個あたり1,000円の商品を100個売って売上が15万円だった場合、可変費が10万円(1,000円×100個)で限界利益は5万円。これにより、固定費の半分を回収でき、停止より損失が小さくなります。
なぜ赤字でも「止めない方がマシ」なのか
企業が操業を停止しても、固定費は必ず発生します。たとえ1円の売上もなくても、工場の賃料や設備のリース代、最低限の人件費などは払い続けなければなりません。
一方、操業を続けることで得られる収入が可変費を上回っている場合、固定費の一部でも回収できるため、停止した場合よりも損失を抑えられるのです。これが、短期赤字でも操業を続ける合理的な理由です。
実際のビジネス現場での事例
飲食業では、閑散期に人件費を最小限にして営業を続けるケースがあります。完全休業すれば家賃や光熱費などの固定費が丸ごと損失になりますが、わずかでも売上があれば、支出の一部を回収できる可能性があるためです。
製造業でも、短期的に受注が減ってもラインを止めず、最小限の生産を続けることで、従業員の維持と機械の稼働率を確保し、長期的な再立ち上げコストを回避する狙いがあります。
いつ「操業停止」を判断すべきか?
限界利益がゼロを下回る(=売上が可変費すら下回る)場合、操業を続けるほど損失が大きくなるため、経済学的には即時停止が合理的とされます。また、短期的な赤字であっても、将来の収益回復の見込みが立たない場合には、撤退や縮小といった判断も必要になります。
そのため、企業は財務状況だけでなく、市場動向や需要予測も踏まえた柔軟な意思決定が求められます。
まとめ:短期的な赤字と操業判断は経済合理性で決まる
企業が短期的に赤字であっても操業を続ける理由は、可変費を上回る売上がある限り、固定費の一部を回収できるためです。操業停止によって全ての固定費が損失になるよりも、損失を軽減できるという合理的な判断なのです。
固定費と可変費の構造、そして限界利益の考え方を理解することで、企業の経営判断がよりクリアに見えてきます。経済学的な視点から見ると、赤字=即撤退とは限らないことがよくわかります。

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