エリオット波動理論は、相場のパターン認識に優れた分析手法として知られていますが、細部の理解には専門的な文脈が求められます。特に第3波が延長したケースにおいては、第2波・第4波のリトレースメントの関係が混乱を招くこともあります。この記事では、実際の記述に基づき、構造的な整合性とルールの理解を深めます。
第4波は「前の第4波の範囲」に収まるとは?
『エリオット波動入門』(P88)にある「最大のリトレイスメントはより小さな段階の前の第4波が動いた範囲内に収まる」という記述は、多重構造におけるガイドラインを示しています。これは主に第3波が延長していない通常構造、もしくは一般的な修正波の深さの目安として活用されます。
つまり、インパルス波全体の第4波は、内部の第3波構成(つまり第(1)〜(5))の第(4)波の価格帯までで下げ止まることが多いという傾向を指します。
延長した第3波内の第2波と第4波の位置関係
一方でP90の記述「延長した第2波の安値はより大きな段階の直近の第4波の価格帯、またはその近辺となる」という内容は、第3波が延長した場合に特有の特徴です。つまり第3波が他の波動に比べて明らかに長くなるようなケースでは、その内部構造に関する波動のガイドラインが優先されます。
延長した第3波の中に現れる修正波(第(2)波や第(4)波)は、親波動の構造の支持・抵抗と一致する傾向があります。これがP90で言及される「直近の大きな第4波」との整合性です。
2つのルールは同時に成り立つのか?
ご質問にある通り、第3波が延長した場合に、
- 大きな第4波が、延長第3波内の第(4)波まで戻る(P88)
- 延長第3波内の第(2)波の水準まで戻る(P90)
という2つが同時に成立するのか? という点については、結論として両方が厳密に同時に成立することはまれです。
なぜなら、リトレースメントが第(2)波の水準まで及んだ場合、通常は第(4)波が第(1)波の始点を下回るリスクが高まるからです。エリオット波動の基本ルールに反するため、P90の指摘は“近辺”という表現にとどまり、実際にはP88の方が優先される傾向にあります。
具体例:第3波が延長した相場での調整波
例えば、ナスダック指数などの急騰相場において、典型的な第3波延長が観察されることがあります。その際の第4波調整は、しばしば第(4)波のゾーンで反発するケースが多く、それより深い戻しは市場心理的に強い反発を伴うこともあります。
このように、第4波が深く戻すかどうかは、ボラティリティ・出来高・ニュースなどの状況次第でも変わるため、理論上は“価格帯の目安”であり絶対値ではありません。
まとめ:リトレースメントは“範囲”と“優先順位”で理解する
エリオット波動におけるリトレースメントの深さには複数の指針がありますが、それぞれの指針は波動の延長・階層構造・修正の形状などを踏まえたうえで、柔軟に解釈する必要があります。
特に第3波が延長する場合は、波動の内部構造と親波動との整合性に注意し、価格帯の“範囲”としての考察にとどめることがポイントです。
疑問に思う感覚こそが、波動理解を深める第一歩となります。引き続き、相場を構造的に読み解く目を養っていきましょう。

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